(2025年7月12~13日、埼玉・富士見市立市民総合体育館 / 取材・撮影=布施鋼治)
■男子フリースタイル79㎏級優勝・高谷大地(自衛隊=パリ・オリンピック以来となる大会出場で優勝)「今年になってから海外で一個(米国でのワンマッチ)あったけど、あれはお祭りということで、公式戦には入れなくてもいいと思います。(尻上がりに調子を上げていったことについて)『ふだんの練習と試合のギャップって、どんな感じなんだろうな』と確認したい気持ちがあって、最初はそのギャップがうまく合わなかった。反応できるところで反応できなかったり…。
でも、セコンドに就いてくれた(同じ自衛隊所属の)山本泰輝や石黒隼士がすごくいいタイミングでアドバイスをくれ、『ああ、なるほど』と、その場で『この構えは高いな』と修正することができたんですよ。今回、あらためてセコンドの重要性やマットで闘うときの心の作り方が大切であることを学びました」
■男子フリースタイル86㎏級優勝・髙橋夢大(三恵海運=3試合を勝ち抜いて優勝するも不満顔)「社会人になって学生のときと比べると、試合数がかなり減った。この社会人選手権で優勝すると、秋の韓国遠征に行けるということだったので、出ることにしました。明治杯では結構よく動けていたけど、数週間空いたら自分のレスリングがちょっと崩れてしまった。今回は3試合闘ったけど、いずれも満足のいくレスリングができなかった。
(結果的に優勝はできたけど、内容的に)そう簡単にいかなかったところは、反省点ですね。自分の持ち味はタックル。でも今回は初戦から決勝まで組んで動きを止めてきた相手に合わせにいってしまい、相手のペースになりがちだった。自分のやりたい組み手からのタックルが全くといっていいほど出せなかった。でも、場数を踏むという意味では、やっぱりいい経験になったと思います。今の目標は天皇杯(全日本選手権=12月)で優勝して、来年のアジア選手権の代表権を勝ち取ること。自分の納得いくレスリングを貫きたい」
■男子フリースタイル125㎏級・曽我部健(日亜化学工業=予選リーグで敗退)「レスリングの試合は鹿児島国体以来なので、2年ぶりです。僕はもともとグレコローマンの選手で、それ一本でやってきました。いま、42歳。まずは(レスリングに必要な)6分間闘える体力を戻さないといけない。もちろん勝ちにいかなければならないことも分かっているけど、6分闘い切ることも重要だと思ってやっています。
明日のグレコローマンも同じような感覚でやり切ろうと思っています。(競技に復活した理由を日本で開催のデフリンピック出場か、と聞かれ)そうですね。それでもう一度やろうかなと思いました。デフリンピックに出場して燃え尽きようかなと思っています。出ようと思ったのは去年の10月くらい。声をかけていただきました。レスリング協会が主催する強化合宿ではレスリングの練習ができますが、地元の徳島にいるときはウエートトレーニングくらいしかできません。レスリングができる高校まで行くとしたら、片道2時間くらいかかってしまうんですよ。でも、今日試合をしたことで、新たな課題も見えてきました」
■男子グレコローマン72㎏級3位・下山田培(NSW Wrestling=オーストラリアに国籍変更。準決勝で萩原大和に敗れる)「すごく長い一日でした。でも、(見ている方々が)楽しんでもらえたなら、よかったと思います。負けても勝っても面白いレスリングする。僕はそういう試合しかできない。それが僕のレスリングの美学なんじゃないでしょうか。
オーストラリアでのメーンはコーチングなので、自分の練習をすることは結構大変です。それでも、いろいろな人が手伝ってくれるので、それに応えられるよう、次のオリンピックに向けて頑張りたいと思います。2週間前のオーストラリア選手権で優勝しているので、世界選手権(9月、クロアチア)には、行けるはずです」
■男子グレコローマン77㎏級優勝・山崎弥十朗(サイサン=前日のフリースタイル79㎏級準決勝では高谷大地に惜敗も、グレコローマンでは優勝)「フリースタイルでもグレコローマンでも、闘うことは大変。でも両スタイルをやることで、双方のいいところを練習して試せる。(練習の拠点である母校の)早大はどちらもやらなければいけない環境なので、今回どちらのスタイルにも挑戦することで、学生にも共有できるところがありました。
個人的にも楽しかったし、収穫もあった大会でした。(9月7日に総合格闘技=MMA=でプロデビューすることについて)今後、MMAはプロとしてやっていく予定です。ただ、レスリングの方も、出られる大会にはしっかりと出たい。どちらに比重を置くかと聞かれたらMMAになるけど、バックボーンとしてレスリングは絶対必要だと思う。レスリングの試合に出ても勝てるくらいのMMAの練習と強気のバックボーンを持っていれば、今後絶対自信にもつながると思う」
■男子グレコローマン82㎏級優勝・高谷大地(自衛隊=前日のフリースタイル79㎏級に続き、グレコローマンでも優勝)「めちゃくちゃ緊張しました。(何度もがぶり返しで決まっていたことについて)いや、(グレコローマンだと)僕にはあれしかできないので。それを知っている相手側のセコンドからは『高谷に、がぶらせたらいかん』という声も飛んでいましたよね。だから逆に『何とかがぶってやろう』と思っていました。グレコローマンだったら、僕の強みはそこしかない。
この階級だと僕は圧倒的に軽いので、そこはめちゃくちゃ重要視していました。逆にグランドの展開になったら、絶対やられると思っていました。案の定、2回戦ではグラウンドで先制点を取られています。(明らかに体格差のある試合が多かったが)今日の朝、4㎏アンダーでした(微笑)。それでも、パリ・オリンピック前には自衛隊所属でグレコローマン87㎏級の選手、今はコーチになった角(雅人)さんにも胸を借りるつもりでグレコローマンでぶつかっていました」
■女子53㎏級優勝・村山春菜(自衛隊=夫・村山貴裕は男子グレコローマン87㎏級で準優勝)「9月に世界選手権で外国選手と対戦するので、今回は組まれたらそのままにせず、早くはずして自分の組み手に持っていくことがテーマでした。できたのは30%くらいだったけど、うまくいかなかったらいかなかったで、どうしようと考えられる。そういう意味では当初の目的はほぼ達成できたと思います。
(夫の準優勝について)私はまだ現役なので内容も結果もしっかり求めていかないといけない立場にいる。対照的に、夫が楽しくレスリングをしている姿を見て、「やっぱり楽しいからレスリングをずっとやってきた」という自分の原点を思い出しました。いま楽しくやるのは難しいかもしれないですけど、楽しんでいる人が一番強いんじゃないかと思った大会でもありました」