米国レスリング界の名門コロンビア大チームが6月4日から15日まで来日し、早大を拠点に合同練習を行った。今回の遠征は、1996年アトランタ・オリンピック・フリースタイル57kg級金メダリストで、現在ニューヨークRTCのコーチを務めるケンドール・クロス氏の提案によって実現した。クロス氏は日頃からコロンビア大の選手指導にも携わっており、交流の橋渡し役を果たした。
クロス氏は、早大OBで1988年ソウル&1992年バルセロナ両オリンピックのフリースタイル90kg級で銀メダルを獲得した太田章氏(現早大教授)と親交があった。両者は1991年、太田氏がオクラホマ州立大学にコーチ留学していた際にともに練習していた仲。以降も友人関係を続けてきた。
1999年には、早大OBの石塚新弥氏(現伊藤忠商事アフリカ総支配人兼ヨハネスブルグ支店長)が、マサチューセッツ工科大学(MIT)にMBA留学していた際、太田氏の紹介で、同じボストン近郊にあるハーバード大のコーチを務めていたクロス氏を訪問。練習に参加したことで、交流の輪はさらに広がった。
今回の訪日も、クロス氏から石塚氏へ「日本への遠征を考えている」と相談されたことが発端。早大の梅林太朗コーチも過去にニューヨークRTCやコロンビア大学でクロス氏の指導のもとで練習した経験があり、複数の縁が今回の交流実現を後押しした。
アメリカの大学は夏休みに入っている一方で、日本の学生は大会が続くため、日程調整は難航したとのことだが、調整の末、この期間での早大の受け入れが実現。コロンビア大学の選手たちは早大での練習に加え、日体大や専大の練習にも参加し、現在世界を席巻する日本のレスリングへの理解を深めた。
歴史的にも両校は共通点が多い。1931年創部の早大は「日本レスリングの発祥」として知られており、1903年創部のコロンビア大もアメリカで最も古い伝統を誇るチームである。
最終日には今回の交流を記念し、お互いのチームTシャツの交換で友情と敬意を象徴する場面が実現。この交流を記憶のみならず記録に留めるため、全員での記念撮影が行われた。
早大の岡田英雅監督は「両国で最も歴史のあるチーム同士がこのような交流をはかれたことは、非常に意義のあることでした。互いに文武両道に励むという共通点もあり、学生たちには非常にいい刺激になったと思います」と語った。
クロス・コーチは「今度は、ぜひみんなで来てほしい」と要望した。同監督は「機会があれば我々もニューヨークを訪れたい」と、今後の交流継続にも意欲を示した。
早大は6年後の2031年に創部100年を迎える。