2025.05.23NEW

【2025年東日本学生リーグ戦・展望】パリ金メダリスト4人がコーチへ、個々の力を信じ日体大が王座奪還 目指す

(文・撮影=布施鋼治)

 「目の前の試合を着実に遂行するだけです」

 5月26日(月)~28日(水)に東京・駒沢屋内球技場で行われる2025年東日本学生リーグ戦で、日体大は王座奪回を狙う。冒頭の言葉は、巷の予想で「今年も山梨学院大の優位を推す声が多い」という質問を受けた際の松本慎吾監督の発言だ。

 「一昨年まで2年連続でグランドスラム(団体戦三冠=東日本学生リーグ戦、全日本大学グレコローマン選手権、全日本大学選手権)を取っていて、去年は3年連続を狙っていたけど、フタを開けてみたらひとつもとれなかった。その結果をしっかりと受け止め、新たなチームでしっかりやっていかないといけない」

▲リーグ戦の王座奪還へ向かう日体大

 今春、日体大は長らくフリースタイルを指導していた湯元健一コーチが大体大に移籍して監督に就任。代わりに、外部コーチとして樋口黎選手(ミキハウス)清岡幸大郎選手(カクシングループ)が新たに加入した。グレコローマンは文田健一郎選手(ミキハウス)日下尚(マルハン北日本カンパニー)が同じ形で母校をバックアップすることへ。松本監督はパリ・オリンピック金メダリスト4人が協力してくれることになったことに目を細める。

 「彼らも現役選手なので、学生を相手にスパーリングをし、環境的には非常に整っている状況ですね」

 取材日は清岡が陣頭指揮をとる形でフリーの練習を束ねていた。

▲フリースタイルの選手を指導する清岡幸大郎選手兼コーチ(左)

「下馬評はいろいろあるけど」…髙橋海大主将

 「樋口さんや清岡さんとコミュニケーションをとりながら、新しいチームを作っている真っ最中」と語るのは、4月からチームの主将となった髙橋海大主将(4年)。昨年はU23世界選手権で優勝しているが、その大会で右ひざ前十字じん帯を断裂。その直後に開催されたシニアの世界選手権には出場したが(5位)、そのあとは手術を受けて戦線離脱。今度のリーグ戦は、昨年11月以来、6ヶ月ぶりの復帰戦となる。

 「ドクターからは全治8ヶ月と診断されましたが、その後のリハビリや回復具合を鑑みて、今大会での復帰を決めました」

 今年のチームの特色を聞くと、堅実さをアピールした。「去年は、いい意味でにぎやかで、盛り上がりがあるチームだった。今年の4年生は、はしゃいで元気がメチャクチャあるというより、しっかりした人が多い。その分、ひとつひとつしっかりとやっていくチームになっていると思います」

▲主将としてチームをけん引する髙橋海大(右)

 昨年の山梨学院大との最終戦(決勝リーグ3回戦)で、髙橋は74㎏級で鈴木大樹主将を破ったが、白星が期待されていた57㎏級の弓矢健人らが次々と敗れ、2-5で敗れ、山梨学院大に6年ぶりに優勝をさらわれた。

 今回は最終日に、A組、B組の予選リーグ上位2校が決勝トーナメントに進出し、準決勝を経て決勝で対戦する新ルールが適用されているが、髙橋は「チームとして優勝しか目指していないので、予選リーグで2位になるつもりもない」と言い切る。

 「決勝は山梨学院大との対戦になると予想します。下馬評はいろいろあるけど、我々は目の前の試合をひとつひとつ大事に勝ち続けていくだけです」

リーグ戦の王座を奪還し、明治杯へ挑む

 松本監督も山梨学院大との決勝を予想する。「山梨学院大は、特にフリースタイルの選手層が厚いし、そう簡単には勝ち切れない階級もある。今年は4-3という勝負になるんじゃないかと予想します」

 最後まで競り合った勝負になるという読みながら、ここで松本監督が重要視するのは現在の団体戦に採用されている抽選によって決まる試合順だ。「例えば125㎏級から始まることもあれば、57㎏級から始まることもある。団体戦特有の流れをどちらが先につかむか。それによって、勝敗も異なってくる部分があるかと思う。個々の力+チームの力を信じて闘っていきたい」

予想されるメンバーは下記の通り。

57kg級 弓矢健人(4年=2024年アジア選手権優勝/2024年全日本選手権3位)
61kg級 五木田琉(4年=2025年U23全日本選手権2位)
65kg級 西内悠人(3年=2024年全日本学生選手権優勝/2025年U23全日本選手優勝)
70kg級 山下凌弥(3年=2024年全日本選抜選手権74kg級優勝/2024年U20世界選手権優勝)
74kg級 髙橋海大(4年=2024年全日本選抜選手権79kg級優勝/2024年U23世界選手権優勝)
86kg級 神谷龍之介(3年=2024年全日本選手権79kg級優勝/2025年U23全日本選手権2位)
125kg級 岩澤 歩(4年=2024年全日本選手権グレコローマン130kg級3位)

▲昨年の天王山で敗れた雪辱を目指す57kg級の弓矢健人

 打倒・山梨のキーマンは57㎏級の弓矢健人、65㎏級の西内悠人、70㎏級の山下凌弥、そして74kg級の髙橋海大だ。

 「86㎏級では神谷龍之介(3年)五十嵐文彌選手(4年)を相手にどこまでできるか。そこで白星を挙げることができれば、チームとしては、ぐっと楽になりますね」

 新たな環境で、どんな魅力的なチームになっているのか。日体大はリーグ戦で王座を奪回し、勢いをつけたうえで明治杯全日本選抜選手権(6月19~22日、東京・東京体育館)に挑もうとしている。

▲日下尚コーチに鍛えられるグレコローマン期待の星、吉田泰造(1年=香川・高松北高卒)。リーグ戦での出番はあるか?

▲コーチングスタッフが変わり、新たなスタートとなる日体大