昨年のこの大会と明治杯全日本選抜選手権で優勝しながら、負傷で戦線離脱を余儀なくされてしまった星野レイ(神奈川大)が、約8ヶ月ぶりに実戦へ復帰。U20-68kg級で2試合に圧勝して2連覇を達成し、昨年できなかった世界への飛躍を再スタートさせる。
「長いブランクでした。ブランクをマイナスにはとらえたくなかった。その期間も自分にとってプラスにする、という意識で取り組んできました」と、しみじみ振り返り、復活優勝がうれしそう。
スパーリングができるようになったのは3月中旬。それまでにも打ち込み練習などはやっていたが、実戦に近い練習に不安はあった。それでも、この大会へ向けて徐々に動きが戻り、「うれしかったです」と気持ちも盛り上がってきたという。
最初にマットに立ったとき、「この場に戻って来られたことが、うれしかった」という気持ちが脳裏をよぎったと言う。一方で、つらい期間を乗り越えてきただけに、その経験が自信のようなものにつながり、「緊張せずに楽しく試合に臨めました」と言う。
負傷箇所への不安は、「ない、と言えば、うそになりますね」とのこと。この日の2試合だけで、その気持ちが完全に消えることはないだろうが、世界への再挑戦の基盤は作れたと言えるだろう。
東京・日体大桜華高時代の2023年にインターハイ2連覇、U20のアジア選手権と世界選手権で優勝など、国内外で成績を残した。12月の天皇杯全日本選手権こそ古市雅子(自衛隊)に敗れてシニアの壁にぶつかったが、神奈川大に進んだ昨年の全日本選抜選手権は元世界銀メダリストの宮道りん(一宮運輸)を破って優勝。希望に満ちた2024年をおくるはずだった。
しかし、7月の東日本学生選手権で右脚をひねってひざを負傷。マットから離れていた場所で試合を見ていた神奈川大の吉本収監督(東日本学生連盟会長)が「(断裂の)音が聞こえた」というほど強烈な衝撃で前十字内側じん帯を損傷。2度にわたる手術をすることになり、しばらくマットを離れた。
上半身の体力トレーニングに打ち込む期間と思った一方、「正直言って、辛かったです」という言葉が本音だろう。だが「必ず復活できる」という気持ち忘れることなく毎日をすごした。入院中にパリ・オリンピックが行われ、日本勢が活躍したことが気持ちを後押ししてくれた。「いいときにオリンピックがありました」と振り返る。
ブランクの間、1年生インターハイ・チャンピオンを阻止されるなどライバルの一人でもある北出桃子(至学館大)が全日本選手権(65kg級)で2位に入り、今年2月のブルガリアでの国際大会で優勝するなどシニアの世界で飛躍を始めている。「自分は自分で頑張っていけばいいかな、と思います」と、特に焦りとかはないようだが、ライバルと言える選手の活躍は刺激になることは間違いないあるまい。
北出はこの大会の65kg級で優勝。一緒にU20世界選手権(8月、ブルガリア)へ出場することになる。また同じ階級で闘うときが来るかもしれないが、今は別の階級の選手として切磋琢磨し、ともに世界への飛躍を目指すことになる。
本来なら明治杯全日本選抜選手権(6月19~22日、東京体育館)に出てシニアの世界選手権を目指すべき選手だが、当面の目標はU20世界選手権での優勝。「けがが完治したわけではないと思いますので、焦らずに練習を積んで行こうと思います」と、全日本選抜選手権と7月の東日本学生選手権はスルーしてU20世界一復帰を目指す腹積もり。
日本の68kg級は、階級区分が変わった2018年以来、世界一の選手が生まれておらず、奮起が望まれる階級。パリ・オリンピック代表を争った石井亜海(クリナップ)や森川美和(ALSOK)も安閑とはしていられない状況となる-。