2025.04.05

【2025年全国高校選抜大会・特集】学校対抗戦での健闘に続き、個人対抗戦でも「金1・銀1・銅1」…京都八幡(京都)

 2025年全国高校選抜大会の学校対抗戦で昨年のインターハイ王者・鳥栖工(佐賀)を破った京都八幡(京都)から、個人対抗戦で2選手が決勝へ進出。1人が優勝(60kg級・田島翼)、1人が惜敗(65kg級・鸙野大河)。他に3位に1人(80kg級・小西寿)が入り、学校対抗戦での結果が“まぐれ勝ち”でなかったことをアピールした。

▲メダル獲得の3選手。左から鸙野大河(65kg級)、田島翼(60kg級)、小西寿(80kg級)

長所を伸ばし、短所を修正する練習を心がけて飛躍…田島翼

 田島は、JOCジュニアオリンピックカップU17で2年連続5位と、全国での実績のない選手だが、2回戦で昨年のインターハイ王者・古市大翔(千葉・日体大柏)をテクニカルスペリオリティで勝っての決勝進出。関東予選2位の戸邉昇輝(埼玉・花咲徳栄)にも10点差をつけての快勝で、全5試合をテクニカルスペリオリティかフォールで勝つ強さでの優勝だった。

 「最初から攻めることができた。それが勝因だったと思います」と振り返り、攻撃レスリングができたことを強調。これまでは緊張して体が満足に動かないことが多かったそうだが、今大会は「それがなかった」と言う。その要因を聞くと、しばらく首をひねったあと、試合に臨むにあたっての「ルーティン(決まった行動・日課)がしっかりできたからだと思います」とのこと。“ふだんの延長”で闘えたことがよかったのだろう。

▲常に攻撃レスリングを展開した60kg級の田島翼

 JOC杯5位が最高という成績から一気に全国一に登り詰めることができたのは、「京都八幡の練習に尽きます。しっかり成長させてもらえるだけの練習です」ときっぱり。練習時間は短いそうだが、「長所を伸ばし、短所を修正できるように指導してもらっています」と説明。この優勝を機に、今年は「高校三冠王を目指したい」と力強く話した。

インターハイでの目標は、まず出場!…鸙野大河

 1年生(4月から2年生)の鸙野(ひばりの)は、丸田龍平(埼玉・埼玉栄)との決勝の第1ピリオドを1-8の劣勢ながら、最後は7-8まで追い上げる猛追を見せたが、あと一歩足りなかった。「負けてしまったけど、初めての全国選抜大会で2位になれたことに、先生や家族に感謝したい」と、悔しさの中にも、現段階での実力はある程度出せたという感覚があるようだ。

 終盤の猛攻はすごく、あと10秒あれば追いついたと思えるほど。だが、「田島先輩のように最初から攻めるレスリングができなかったのがダメでした」と反省の言葉が出て、そのあたりの修正が今後の課題だ。

▲逆転を目指して終了間際にも反り投げを仕掛けた鸙野大河(赤)。勝負を最後まであきらめなかった

 昨年はU15アジア選手権(タイ)に出場して優勝しており、すでに国際舞台での実績を持つ。その大会は、早生まれなのでチームで唯一の高校生としての参加だった。「周りは年下ばかり。勝たなければならない、という気持ちだったんです」と苦笑いし、かなりのプレッシャーの中での試合だったようだ。

 それを克服しての優勝は自信になったと思われたが、「U15と高校生のレスリングは違いますから」と話し、京都八幡高では学ぶことの方が多かったようだ。

 だが、その結果として全国2位。今度は自信となって飛躍へつながる成績だろう。「去年はインターハイに出られなかったので、まず出場権を取ることを目標にしたい」と控えめに目標を話し、「スタートから攻めて6分間闘えるスタミナをつける練習をやっていきたい」と話した。

▲チームを支えた浅井努監督(左)と北村公平コーチ

「忘れてはいけないのは感謝」…浅井努監督

 2人が共通して口にしたことは、「『レスリングだけという人間になってはダメ。人間として立派だと言われるようになれ』という指導を受けています」ということ。浅井努監督のブログに書いてある方針こそが、同部のモットー。人間力の確立にも力を入れている。

「言ってはいけないのは愚痴」(愚痴を言ってもプラスになることはまず何もない。逆にマイナスである。愚痴を言ってるうちは、誰もが成長しない)。
「失ってはいけないのは信用」(信用されると周りは助言も与えてくれるし面倒もみてくれる。注意や忠告して話してくれるうちが華。信用がなくなると、呆れて誰も相手してくれない)
「尽きてはいけないのは希望」(希望があるから頑張れる。努力できる元となる)
「捨ててはいけないのは情熱」(人生上手くいくことの方が少ない。腐らす焦らずコツコツと。情熱を切らすな。切らさなければ絶対、成功する時が来る)
「決めてはいけないのは限界」(自分で限界を決めてしまっては、それ以上、上に上がることはない。最大の敵は自分自身なのである)
「負けていけないのは自分」(まずは自分に打ち勝て。自分自身に勝てないような奴が人に勝つなんて到底できない。自分の限界を破り、負けてはならない)
「忘れてはいけないのは感謝」(この気持ちがないと人として失格。人間力が問われる)

 公立の普通科高校で唯一、この大会の学校対抗戦で2度の優勝実績(2008年、2015年)を持つチームの今後が期待される。

▲インターハイへ向けての飛躍が期待される京都八幡