2025.03.28

【2025年U23全日本選手権・特集】壁を破って全日本王者を撃破! 長髪ファイターが飛躍する…男子フリースタイル79kg級・高原崇陽(専大)

 2025年U23全日本選手権の男子フリースタイル79kg級でアップセット(番狂わせ)が起きた。日本の学生選手には珍しく長髪をなびかせて闘う高原崇陽(すばる=専大)が、一昨年と昨年の全日本王者の神谷龍之介(日体大)を9-6で撃破。初めて全日本レベルの大会を制し、U23世界選手権の出場権を獲得した。

▲U23ながら全日本を制し、世界を目指す高原崇陽

 高原は「やっと優勝できたな、という気持ちで、うれしいです」と第一声。東日本学生の新人戦や選手権での優勝はあるが、学生や全日本の大会は2位や3位まではいくが、優勝にあと一歩手が届かない成績が続いていた。今大会で、やっとその壁を乗り越えて優勝を手にしたのだから、その言葉に実感がこもる。

 決勝を闘った神谷は、1年生で全日本王者に輝くなど(2023年)、華々しい成績を残しているが、高校時代から同じ東海地区の選手(高原=岐阜・高山西高、神谷=三重・いなべ総合学園高)として何度も闘っていた相手。対戦成績では分が悪いようだが、昨年11月の全日本大学選手権・準決勝では4-5で惜敗している。さほどの実力差は感じていないようだ。

▲首を痛めた神谷に終始優位を保ち、突き放した

3日前にろっ骨を折るアクシデント!

 試合は第1ピリオド前半、タックルを受け止め、がぶり返し2回転で攻めた。神谷の首が危険な状態になったためレフェリーがストップをかけ、2回転目は認められなかったが、2ー0と先制。これで余裕ができたのか、神谷の体に異変が生じたかは分からないが、神谷の攻撃を許さない。

 第2ピリオド、相手の仕掛けのミスに乗じ、グレコローマンでもなかなか見られないような4点のバック投げを決めて9-0へ。その後は追い上げられてしまったが、大量リードの有利は崩れなかった。

 がぶり返しのとき、反則(レフェリーがストップをかけたのに攻撃を続けた)に自責の念があったのか、相手陣営に謝罪する仕種があったが、試合再開後は気持ちを切り替え、「そのまま攻めようと思いました」と言う。

▲最後は追い上げられたがリードを守り、勝利の雄叫び

 神谷の首が途中から万全でなかった可能性はあるが、高原もろっ骨を負傷(骨折)しており、コンディションは万全ではなかった。「3日前です。ほやほやです」と笑うが、「棄権も考えた?」との問いには、「一切考えていませんでした」ときっぱり。悪化させないため、準決勝まではロースコアでもいいからあまり動きのない闘いを心がけたという。決勝はそんな闘いでは勝てない相手だが、「気持ちでカバーできたと思います」と言う。

我(が)を貫く以上、結果を出さなければならない

 これまでU20アジア選手権には2度出場し、銀メダルと銅メダルを取っているが、世界へは初めての挑戦。「世界でどれだけ通用するか楽しみです」と言う。同時に、全日本王者を破ったことで、シニアのタイトルも視野に入ってきた。神谷もリベンジに燃えてくるだろうが、「今回の課題を修正し、通用できた技を伸ばしていきたい」と話し、はね返す腹積もりだ。

 この日は長髪ではなく、コーンローというヘアスタイル。昭和時代なら、間違いなく「ヘアスタイルにうつつを抜かすなら、練習しろ」と言われただろう。現在でも「髪を切れ」と言われているそうだ。しかし、「周りと同じにしたくない。周りからとやかく言われたくないんです」と言う。「『切れ』と言われて、それに従いたくなかった。その気持ちを貫いて、こうなっています」と、自己を貫いての結果とのこと。

▲この優勝を機に、世界へ飛躍を目指す=撮影・保高幸子

 それだけの我(が)を貫く以上、結果を出さなければならないことは承知している。とりあえず結果を出せてほっと一安心だが、このあとは新主将として、リーグ戦へ向けてチームをけん引しなければならない。

 昭和時代でも、専大OBでプロレスへ行った長州力(吉田光雄)は長髪をなびかせて全力ファイトを展開。ファンの心をつかんで維新革命を成功させた。最近のレスリング界では、高谷惣亮・現拓大監督がヘアスタイルにこだわりを持ちながら成績を残している。結果を出せば、だれも文句は言わない。高原の信念の真価が問われるのは、これからだ。