2025年最初の全日本合宿が1月27日から東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで行われ、新任の井上謙二強化本部長(自衛隊)の体制がスタートした。30日の報道陣への公開練習で、井上本部長に抱負などを聞いた。
--強化本部長に就任された今のお気持ちをお願いします。
井上 昨年のパリ・オリンピックで日本は史上最高の成績を残しました。これを超えることが私に託された使命であると思っています。満足してしまうと、そこで衰退が始まる。そうならないようにしたい。選手達が自分に自信を持って次に向かおうとしている。そこをコーチが引っ張り、2028年のロサンゼルス・オリンピックでより好成績を目指している。そのために、1日、1日を大切にしています。
--練習では明るい雰囲気が印象的でした。指導方針をお聞きしたい。
井上 時代に合わせた形で選手に寄り添い、選手と同じ目線でやっていきたい。ただ、それだけでは選手の可能性を引き出すことができないので、時には厳しい言葉もかける。フォローもしながら、選手と指導者が団結して歩むようにしたい。若い指導者も多く入った。ともに苦労し、闘ったこともある指導者がいる。一緒にロサンゼルス・オリンピックを目指す、が私のスタンスです。
--この合宿を見ての感想は?
井上 コーチを一新し、若いコーチが積極的に指導している(という印象)。女子チームには伊調馨、小原日登美の2人の女性コーチが入った。女子のオリンピック金メダリストが、のちの全日本コーチとなるモデルケースとなってほしい。小原コーチは家庭での子育てとの両立となりますが、それでもやっていける環境を整えたいと思います。
--パリ・オリンピック代表選手も含めての合宿の雰囲気はどう感じられましたか?
井上 若い選手のロサンゼルスを目指す気持ちが伝わってきました。ここに来ていないパリ代表も、世界へ飛び立って活躍している。日本のレスリングをアピールしてくれて、ありがたいことです。全日本合宿では、次に控える大会に向けて一致団結したい。初めてナショナルチームに入るコーチもいて、緊張感の中でも一緒になって汗を流しているシーンをうれしく思っています。それを力として、(自分自身も)頑張って、いい環境をつくっていかなければならないと感じています。
--コーチとのミーティングで心がけていることは?
井上 合宿の初日に実施しました。自分の気持ちを率直に、堂々と、はっきりと伝えてほしい、ということです。多くのコーチの意見を聞きながら、やっていきたい。指導経験の豊富なコーチもいれば、目の前のことに必死の新米コーチもいる。その力をすべて吸収し、目標達成に向けて頑張りたい。
--ロサンゼルス・オリンピックでの具体的な目標を教えてください。
井上 パリ以上、です。パリが「金8、銀1、銅2」ですから、これを超えることです。
--(選手へのあいさつで)メダル以外に、レスリングの発展を望む言葉があった。具体的に説明をお願いします。
井上 結果を求めるのはもちろんですが、パリ・オリンピックの代表選手たちが残したこの成果を次につなげたい。競技者の数もそうですし、見に来ていただける人、ファンも増やしたい。大会会場(の観客)は多いとは言えない。少ないです。地道な声かけや魅力の発信によって、より多くの方が試合の応援に来ていただき、コミュニケーションの場の輪をつくり、その輪を広げることのできる競技になってくれることを望んでいます。
--アジア選手権(3月26日~4月2日、ヨルダン)までの強化計画は?
井上 今回の合宿は2月1日までです。そのあと、男子フリースタイルは2月5日から11日まで、男子グレコローマンは2月5日~9日、女子は2月6日~9日まで、全日本合宿を実施します。その期間中、各ブロックからよりすぐられた高校生が50人参加して合同練習もあります。3月はアジア選手権前の調整合宿をして大会に臨む予定です。