2024年度全国少年少女選抜選手権で、全国大会での初の双子姉妹の同時優勝を目指した女子6年33kg級の内田奈那(姉=MTX)と36kg級の内田実那(妹=同)は、姉・奈那が優勝、妹・実那が2位と、明暗が分かれた。
先に決勝を闘い、内田帆乃(ICHINOMIYA)との“内田対決”をテクニカルスペリオリティで制した内田奈那は、昨年7月の全国少年少女選手権でも優勝しており、年度の2大会を制覇した。しかし、試合後はうれしそうな表情はなし。「2人で優勝したかったので…」と、妹とのW優勝がならなかったことを残念がった。
「優勝はうれしいんですけど、気持ちが盛り上がらないんです」。大会で優勝する度に思うのは「自分の力だけでの優勝ではない」ということ。コーチや両親の力であり、一緒に練習する妹の力でもあると思っていた。その妹が優勝できなかったことで、「悲しい、という気持ちがあります」と振り返った。
昨年11月の吉田沙保里杯津市少年少女選手権でW優勝していただけに、「今大会でも」という気持ちがあったようだ。中学へ進んでもレスリングを続けるので、同時優勝のチャンスはいくらでもある。「一番の目標はオリンピックでの優勝です。そこを目指して、実那と2人で歩んでいきたい」ときっぱり話し、これからも2人で励まし合って前へ進むことを口にした。スピードや力をつけるのが今後の課題で、「これまでの大会で負けた相手にも勝てるようにしたい」と言う。
Tシャツの背中には、支援を受けている食べログで人気の「うどんが主食」との広告がある。表彰式プレゼンターの日下尚(三恵海運)は香川県出身で、「うどんパワー」を金メダルの原動力に挙げていたが、それを見つけると、「いいね」とにっこり。オリンピック金メダリストの応援も受けられそうだ。
決勝で負けた内田実那は「悔しいです」と一言。前日の試合で右肩を強打してしまい、この日はがっちりとテーピングしての試合。準決勝はかろうじて勝ったが、決勝は全国少年少女選手権3連覇の郡紗良(INAGAWA)が相手。昨年7月のその大会で負けている相手であり、けがをしている状況で勝つことは厳しかった。けがをしているとは、いえ、負けたのは「やはり悔しいです」と言う。
あと1ヶ月少しでU13ジャパンオープン・トーナメント(3月1~2日)があるので、「けがをしっかり直したい」と、再起を誓った。
郡紗良へのリベンジ、姉妹での飛躍を目指すことになるが、「中学は学年ごとではなく、3学年一緒の大会。上級生を相手にも闘わなければならない。「学年が上の人にも立ち向かえるように力をつけたい。そのためにはパワーをつけたい」と話した。
2人の体重差が縮まっており、U13ジャパンオープントーナメントと沼尻杯全国中学選手権(5月4~5日)は姉妹で同じ階級への出場を余儀なくされる可能性もあるとのこと。そのときは、2人とも「全力を出して勝ちにいきます」と口をそろえた。ときにライバルとなることもありそうだが、姉妹で世界への飛躍を目指す日は近そうだ。
ふだんの練習を見ているMTX GOLDKIDSの成國晶子代表(1990・91年世界チャンピオン)は、「お互いに『実那には負けたくない』『奈那には負けたくない』という気持ちを持っていますね」と、2人の負けん気の相乗効果で全国トップレベルへ来ていると説明。スパーリングでは成國代表を奪い合うそうで、2人の上を目指す気持ちがいい方向へ向かえば世界へ飛躍できる資質を持っていると言う。
同じ階級で闘うことも「やむをえない」とし、無理に階級を変える必要はないと考えている。大阪・大体大浪商中の古澤陸&古澤健の双子兄弟が大会の度に決勝で対戦している例もあり、双子姉妹の“ライバル物語”も幕を上げるか?
成國代表の長男・大志は2022年世界チャンピオンで同クラブの指導員。この日の会場にも選手に同行している。練習ではときに日体大の外部コーチである田南部力氏(警視庁)も姿を見せ、選手の指導にあたっているというから、ハイレベルの技術をマスターするには十分の練習環境だ。
成國代表は「2人とも世界を目指す気持ちは十分に持っています。期待にこたえられるように指導していきたい」と話し、今後を期待した。