(文・撮影=布施鋼治)
米国の女子ナショナルチームが、コーチやスタッフも含め総勢21名で来日。1月17日から群馬県高崎市の育英大で同大学のレスリング部と合同練習を行った(26日まで)。
19日の練習公開日には櫻井つぐみ、元木咲良、石井亜海、清岡もえら育英大の学生&OG選手のほか、森川美和(ALSOK)、藤波朱理、尾西桜の日体大勢、さらにJOCエリートアカデミーからも参加があり、熱を帯びた練習となった。
音頭をとった育英大の柳川美麿監督は喜びを隠さない。「昨日(18日)は自衛隊からの参加がありました。明後日(21日)には至学館大もやって来ます。これから全日本合宿もありますが、それとは別に、米国のチームだけではなく日本のトップどころも参加している今回の練習は強化できるいい機会だと思っています」
当初は2016年リオデジャネイロ・オリンピック55㎏級決勝で吉田沙保里を破ったヘレン・マルーリスや、パリ・オリンピック68㎏級で金メダルを獲得したアミート・エロルも参加予定だったが、直前になって来日中止。
それでも、2019年世界選手権女子55㎏級で優勝したジャカラ・ウィンチェンターら国際大会で見慣れた顔ぶれが勢ぞろいしていた。想像以上の成果があったのか、ジャカラは「今回は(タックル後の処理などの)日本ならではの技術を学びたいと思ってきました。ロサンゼルスでは代表の座を勝ち取って優勝したい」と上機嫌だった。
チームを帯同したテリー・スタイナー・ヘッドコーチは、技術交流もできた今回の来日に確かな手応えを感じているようだった。「試合中、日本の選手は全然ミスをしない。そういう選手たちとの練習は我々にとって非常にためになると思います」
有意義だったのは米国勢だけではない。ふだんは代表合宿でしか顔を合わせないチームの選手も参加しての合同練習となったことで、育英大勢VS藤波など、公式戦では見られない夢の対決が次々と実現した。中でも藤波と石井の階級を超えた闘いは実にスリリングで、見応え十分。
今後も米国チームは育英大での合同練習を強く望んでいる。「来てくれたことで、我々は海外勢の力を体感することができた。アメリカのチームは『毎年来たい』と言っています」(柳川監督)
練習の合間に米国チームをイチゴイチゴ狩りや草津温泉に連れて行くなど、ホストとなった育英大は“おもてなし”も怠らなかった。来年以降は育英大がアメリカに遠征するプランもあるという。
「話が進めば、今度は我々がコロラドスプリングズ(米国ナショナルチームの常設練習場所)に行くことになるでしょう。強化だけを考えれば国内でやっていた方が意味はあると思うけど、アメリカでNCAA(全米大学)選手権の運営を見学したりすることで、何か気づけることがあればいい」(同)
続きがありそうな国際交流は、レスリング界にどんな種を蒔くことになるだろうか。