※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
バクシ(ハンガリー)の投げ技を受けてしまった金久保
「去年より緊張しました。場の空気というか、五輪がかかっているので違いましたね」。1回戦で勝ってその緊張がほぐれ、2回戦のハンガリー戦ではいい動きができるはずだったが、そう簡単にいかないのが五輪前年の世界選手権。
それを裏付けるかのように、前日までの6階級で出場枠ゼロという結果。メダル候補だった先輩2人が枠を取れなかった事は衝撃だったが、落ち込むというよりも、むしろ自分を奮起させることになっていたという。
しかし得意の俵返しは一度も出せず、今まで「一番練習してきた」という成果は発揮できずに終わってしまった。「今回四強になったトルコ、カザフスタン、ロシア、クロアチアは、すべてスタンドが強い。もっと上に行くためには、スタンドが重要だと思いました。コーチ陣にずっと言われてきたスタンドの強化をおろそかにしてきたので、何も言えないです」と、自分のスタイルを貫くだけでなく、大きな変化が必要なことに改めて気づいた。
柔道出身の選手。柔道は後ろ足に重心を置くため、レスリングでもそのくせが出てしまうことがある。レスリング歴が柔道歴を追い越す今年、スタンドの強化とともにそれを修正していかなければならない。
今後の目標は来年3月末にカザフスタンで行われる五輪のアジア予選。上位2ヶ国に五輪出場権が与えられる。今大会でカザフスタンが3位となって出場権を取り、アジアの争いから抜けた。「イラン、韓国、中国が残っていますが、カザフが抜けたことを前向きにとらえていきます」。
勝つための主流となっているスタンドレスリングの強化をすれば、得意の俵返しを披露するチャンスもおのずと増える。意識を変えて強化するチャンスをもらったと受け取れば、今回の失敗も、五輪でいい結果を残すための道のりだったといえるだろう。「悔しい」と何度も口にした金久保だが、次は喜びの声を聞かせてほしい。