2013.01.30

男女の全日本選抜チームがロシアから帰国

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 男子フリースタイルと女子の「ヤリギン国際大会」(ロシア・クラスノヤルスク)に出場した全日本選抜チームが1月29日、成田空港着のアエロフロート航空で帰国した。

軽中量級の全日本王者を中心とした布陣で臨んだ男子は、ベテランの高塚紀行(60kg級=自衛隊)と全日本チーム遠征初参加となった森下史崇(55kg級=日体大)が銅メダルを獲得。田南部力監督(警視庁)は「オリンピックが終わったあとの大会にもかかわらず、60、66kg級には以前からやっていたロシアのトップ選手が参加。アメリカ、イランも一番手をつれて来ていて、かなりレベルの高い大会だった」と振り返っており、この中でのメダル獲得だけに価値がある。

 結果を出せなかった選手も、決して一方的にやられたわけではない。60kg級の石田智嗣(警視庁)は、米国戦では最後に相手の捨て身のがぶり返しを受けて敗れたものであり、「経験を積んでいけば負けないだけの内容だった」と評価する。

 5人のうち3人が初参加だったが、他国から評価は高かったとのこと、米国のジーク・ジョーンズ監督から「日本はいい若手がいるね」と言われたという。一方で、「まだ通用しないところもあった。ワールドカップ(2月21~22日、イラン)までに克服してほしい」と、さらなる飛躍を期待した。

■粘りある外国選手に対応できる技術と執着心を…木名瀬重夫監督

 女子は全日本チャンピオンが2選手という布陣だったが、銀メダル2個、銅メダル4個の成績。木名瀬重夫監督(日本強化コーチ)は「よく闘ってくれた」と健闘をねぎらったが、外国選手の力強さに対抗するために、「崩して動いての攻撃をもっとやらなければならない」と注文した。

また、外国選手はバックを取られそうになってもスイッチや巻きなどでこらえ、粘りがあることも再発見した。足首をしっかり取るなどそれに対応して攻撃する技術と執着心を出すとともに、この粘り強さを「身につけてほしい」とも話した。

 若手を育てるにあたり、考えるべきことも出たという。「国際大会は緊張、恐怖、不安などとの闘い。この中で実力を発揮させることがコーチの役目。『負けてもいい』という気持ちの方がリラックスして実力の100パーセント出せるのかな、と思う反面、『絶対に勝つ』という気持ちを追求した方がいいのかもしれない」と、指導方法の研究したいという。

 吉田栄勝コーチ(日本協会コーチ)は「優勝はなかったけど、優勝に近い選手はいた。もう少し頑張れば勝てるレベルまでいっている。今後も、チャンピオンだけの遠征ではなく、2、3番手選手の遠征もふやしてもらい、全体を鍛えていきたい」と、世界を目指す選手の今後に期待した。

 女子はこのあと、2月中旬に中高生選手によるスウェーデン遠征、3月2~3日にワールドカップ(モンゴル・ウランバートル)出場が続く。


 ■男子フリースタイル55kg級銅メダル・森下史崇(日体大)「レベルの高い大会でした。負けた試合はボロボロにやられて、実力差を感じました。(負けたとはいえ3点取っているが)自分のミスで負けましたし、がぶり返しで3点取られるなどでしたから…。課題も見つかったし、そこを重点的にやっていきたい。(初の全日本遠征は)強い人に囲まれての遠征で緊張しました。これからもこうした遠征が多くなるでしょうから、頑張ってそのレベルに追いついていきたい」

 ■男子フリースタイル60kg級銅メダル・高塚紀行(自衛隊)「全日本チャンピオンの中に2位だった自分が参加させてもらったのだから、結果を出さねばならないと思っていました。もうひとつ上を目指していましたが、3位はとりあえずよかった。5試合のうち、最後の方は試合間隔も短くて体力的にもきつかったですが、最後の最後に自分のよさを出すことができた。これを続けていきたい。でも、決して(年をとって)体力が落ちたとは思っていない。まだ伸びてると思う」

 ■女子63kg級銀メダル・渡利璃穏(至学館大)「課題としてやってきた片足タックルを全部取ることができ、そのままフォールすることもできました。この点ではいい大会になりましたが、反省点もあります。外国選手はしがみついてから投げ技をかけてくることが多いのですが、決勝もそこからの大外刈りに2回もかかって負けてしまいました。自分の甘い点も多く見つかった大会でした。2位は悔しい。次の大会は優勝します」

 ■女子67kg級銀メダル・井上佳子(クリナップ)「決勝は2011年のワールドカップでやっているモンゴル選手に負け、悔しい気持ちでいっぱいです。先制しながら逆転されました。勝てる試合を負けてしまっては駄目です。(12月の全日本選手権は準決勝敗退の不覚)気持ちは切り替わっています。このチャンスを生かしたかったのですが、銀メダルでは満足できません」


渡利璃穏(撮影=木名瀬重夫監督)

井上佳子(同)