※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2年ぶりの公式戦で闘う入不二さん
55歳はフレッシュマンズ部門の最高齢。2年前に続いて初戦で敗れ、初勝利はならなかったが、「この大会は60歳を超えても出ている人がいる。その年あたりまで頑張りたい」と意気込んでいる。
入不二さんは東京大学(文学部哲学科)を卒業し、山口大学を経て現在は青山学院大で哲学の教授として教べんをとっている。
レスリングに取り組んだのは4年前で、51歳の時。子供の頃にプロレスファンだったことに加え、息子がキックボクシングをやっていて、応援で興奮して応援するうちに自身も闘いの道に足を踏み入れたくなったという。「闘いを通じて昔の自分を思いだせるかな、という気持ちもありました」。
スポーツ会館のレスリング教室(同会館の閉鎖により同教室は消滅し、SKアカデミーして継続)へ通い始め、2年前のこの大会に初出場。ほとんど何もできずに初戦敗退に終わったが、その頃から青山学院大のレスリング部の練習にも加わるようになり、同大学OBの2010年アジア大会金メダリストの長谷川恒平(福一漁業)とも対面。完全にレスリングにのめりこんだ。
■果敢にタックルを仕掛けた敢闘精神を披露
昨年はじん帯損傷で無念の欠場。けがを完治させてこの日にそなえていた。試合ではタックルに入って、あと少しでポイントというところまで攻めた。勝てなかったものの「2年前より動けたし、進歩を感じます」と自己評価した。
青学大の太田浩史監督と入不二さん
自身のホームページには、「wrestrling movie」という項目があり、感動したいくつかのビデオがアップされている。「最高の試合」として、1989年に世界で初めて行われた賞金マッチ、ソウル五輪金メダリスト同士の対戦となったジョン・スミス(米国=62kg級)とセルゲイ・ベログラゾフ(ロシア=57kg級)の試合ビデオが挙げられており、かなりの“通”といった感じ。
数多くの著書があり、いずれ哲学の観点からレスリングを分析する書の執筆もありえるかもしれない。
青山学院大レスリング部の太田浩監督は「すばらしいの一言。こんな過酷なスポーツに50歳を超えてから挑戦すること自体が、普通ではありえないし、タックルを入れるまでになったことも素晴らしい。その努力を見習わなければなりません」と話し、これからも部を挙げて応援していくことを宣言した。