※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
――オリンピックで金メダルを取ってはいても、女子のすそ野は狭い。競技人口のさらなる増大が必要です。
福田 この前、広島の桜が丘高校に女子部をつくってもらうよう頼みに行ってきました。「やろう」と掛け声をかけても、場所やマットの確保、指導者などいろいろな問題が出てくる。ひとつひとつクリアし、実現の方向に向かった。被災地の福島県二本松市に行き、市長にレスリング部をつくってほしい、世界のトップ選手をつくりましょう、と訴え、日体大OBを市の指導員として採用してもらうように頼みました。常に普及を考えて動いている。可能性があるのなら、協会の会長として校長先生や市長のところに頭を下げにいくことは、まったくいとわない。
女子レスリングの発展は、福田会長の尽力なくしてはありえなかった
福田 現場で指導だけしていればいいのではない。レスリングの普及にも貢献してほしい。強い選手をつくる指導者というのは、情熱が強い一方で個性も強い。なかなか他人と合わせられない場合が多く、こうした交渉ごとは苦手かもしれないが、ある程度の年齢になったら変わっていってほしい。目標に向かう気持ちがあれば、変わることはできると思う。
――福田会長のマットを離れたところでの陽の目の当たらない努力があればこそ、女子レスリングがここまで脚光を浴びているわけです。
福田 最初は協会の理事会でまったく相手にされず、変人扱いすらされた。私費でクラブを運営し、選手を住まわせ、女子プロレス団体に頭を下げに行って選手を集め、選手の就職も世話して育ててきた。練習場がないので、十日町の分校を買って合宿所とした。それらはすべて私財を投じたものだ。選手やコーチには、そうした基盤があるから今があることを分かってほしい。
――世界のレスリングについてお聞きします。来年2月の国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で、ロンドン五輪で実施した競技から1競技がはずされます。レスリングにその危険はないのでしょうか。
IOCは、ジャック・ロゲ会長の「五輪競技は50年も100年も変わらないわけではない。特に若者のニーズに応えなければならない」との方針のもと、五輪ごとに世界的な普及度や観客数など各競技の状況を見直す制度を導入。2013年2月の理事会で、ロンドン五輪の26競技の中から1競技をはずし、9月の総会でこの1競技と野球&ソフトボール、空手、ローラースポーツ、スカッシュ、スポーツクライミング、水上スキーのウエークボード、武術の8競技の中から2020年五輪の実施種目をあらためて決める。 |
福田 今のところはないと思う。第1回大会から実施されている競技であり、世界的な人気も上がっている。女子も普及発展している。はずされることはないと思う。
――はずされる競技はテコンドーとのうわさもある。階級制競技が除外されると、その枠が女子の3階級(51・59・67kg級)に回ってくる可能性が高くなる。
福田 はずされる競技の問題とは別に、女子の7階級実施の運動は続けている。
グラップリングなどの世界選手権に向かう選手たち。日の目が当たるのはいつ?
福田 FILAとして、どのスタイルを第一に推していくかということが、まだ定まっていない。グラップリング、パンクラチオン、ビーチレスリング、ベルトレスリング…、今年はFILAのMMA(ミクスド・マーシャルアーツ=総合格闘技)もスタートした。まだ選手の絶対数が少なく、日本を含めて本気度が高まっていない。現段階では、新スタイルの五輪種目入りより、女子の7階級実施の方が最優先課題だ。それが実現してから、新スタイルの中で最も発展しているスタイルの五輪入りを目指すことになると思う。
――日本格闘競技連盟も、どれに力を入れていいのか模索中ということでしょうか。
福田 FILAの方針が明確でないと、何をやっていいか分からない面はある。ちょっと前はMMAを推そうとしたが、総合格闘技が低迷してしまい、それができなくなった。日本が成功してこそ、世界へ推せる。総合格闘技はスリリングで、人気を集める格闘技だと思うが…。
――最後に2013年へ向けての抱負を、もう一度、お願いします?
福田 いつの時代も、日本レスリングは常に前進、進化していきたい。金メダルを目指し、一致団結という太い絆(きずな)のもと、突き進みましょう!