※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
■ニューメディアの活用で人気アップを
――若者を取り入れるには、インターネットの活用なくしてはありえない時代です。もう新聞やテレビが主役の時代ではない。インターネット、スマホ、ツイッターなど第3のメディアと呼ばれる武器を活用しなければ、生き残れない時代だ。
福田 インターネットは大いに活用すべきだと思う。やらなければならないでしょう。
11月下旬の全国中学選抜選手権で決勝戦をインターネット生中継をやり、約3000人の人が生とその後の録画中継を見ていた。全日本選手権も第1・2日目にインターネットの生中継をやり、合計4000人が視聴。その後、27日からの協会ホームページの公式動画ページにアップされた動画の総アクセス数は、年内の5日間でのべ1万604件だった。
米国では、ロンドン五輪を全競技をオンラインで生中継。13~24歳の68%がタブレットで、53%がスマホで視聴し、人気映画の3倍の視聴者を集めたという統計が出た。いち早く結果が分かるため、録画で放映されるテレビに対する不満が出た一方、スマホ等で見て、その後、大型画面で見るという視聴者も多く、総視聴者は過去最高だった2008年北京五輪の1億9980万人を上回る2億260万人。ネットがテレビ視聴者を呼び込んだ効果と分析されている |
――強化のひとつの方法として、選手に多くの国際大会の経験を積ませ、見せることがある。女子はここ10数年、2年に1度くらいは日本で何らかの国際大会(アジア選手権、世界選手権、ワールドカップ)をやってきたが、男子は2000年2月の五輪予選以来、行われていない。男子からは不満の声を聞きます。
福田 国際大会の開催は、金銭的に非常に厳しい。1990年に29年ぶりに日本(東京)で男子フリースタイルの世界選手権をやり、協会をあげて金を集めようと呼び掛けたけど、動いてくれる人はわずかで、私がほぼ一人で金集めをすることになった。バブル経済の全盛期で、多くの企業から金が集まり、最終的に黒字になり、翌年(1991年)の世界女子選手権の開催もまかなえた。今はFILAのきまりとして3スタイルを一緒にやるにことなっていて、世界選手権をやるには10億円の金が必要だ。これだけの金は集められない。2020年に東京オリンピックが決まれば、東京で世界選手権をやらなければならないでしょう。東京都の全面的な支援と協会の努力の下、開催したい。政財官とのつながりを密にしなければ、世界選手権はとてもできない。
昨年5月に東京で行われた女子ワールドカップ
福田 5000万円くらいはかかっているでしょう。これも、協会が独自集めなければならない資金です。
■“2020年東京オリンピック”でスポーツ界は変わる! 招致に全力を
――日本で国際大会を開くのも強化になります。強化費を国際大会開催に回せないのはおかしい。
福田 十分に理解していて昔から訴えているが、そう簡単にいかない。法律を変えなければならず、話が進まない。日本で世界選手権を開催できるスポーツはひと握りだ。TOTO(サッカーくじ)の導入で、いくらかでもよくなったが(大会経費の20%までをまかなえる)、大会開催、事務局の充実などに金が使えるような制度の改正の必要性はこれからも訴えていく。2020年に東京でオリンピックを開催することになれば、それを大義名分にしていろんな制度改革がやりやすくなると思う。
――オリンピックが東京に来るかどうかで、レスリング界の将来が変わりますね。
福田 レスリング界だけではなく、日本のスポーツ界全体が変わります。全体が強化に向かう。国も考えてくれると思うし、経済も活性化するはず。経済が上向けば、企業もスポーツに金を出してくれる。来年9月の開催地決定が大きなポイントになる。オリンピックでメダルを取った選手は、競技団体への還元という意味でも、招致活動に積極的に協力してほしい。
――国際大会というほど大げさにしなくとも、例えばジュニアクイーンズカップを外国選手にも開放し、交通費・宿泊費は自分持ちなら参加できるようにすることも一案だと思います。
福田 それはできます。あるいは2ヶ国対抗、3ヶ国対抗といった形で海外の選手と闘う機会をつくることはできる。
毎年実施されている高校生の日韓交流
福田 国際大会ができない分、昔では考えらえないほど選手を海外に出している。現場には、そのことの有難みを感じてほしい。
■インターハイに続き、国体も女子実施へ向けて動く!
――今年は女子のインターハイが実施されますが、国体での女子実施はいかがでしょうか。柔道は時の神永昭夫理事長がなかば強引に入れた。強いリーダーが実行しなければ、なかなかできない。
福田 可能性はあるが、47都道府県で実施していないと実施は厳しいのが現実。女子のいない県は参加点が0点になってしまう。まず47都道府県で女子選手をつくることが必要だ。
――発想の転換で、「5年後に女子を実施するので、それまでに女子選手を育てなさい」とやるのも、ひとつの手だと思います。
福田 それも一案ですね。