※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
■2020年東京オリンピック実現で、制度の改革を目指す
――全日本の強化に戻ります。今、日本オリンピック委員会(JOC)からの強化費の支給が特Aランクで、最高レベル強化費が認められていますが、すんなり使えるわけでななく、協会がそれに見合った収入(3分の1)を確保しなければなりません。競技団体の財政的自立をうながす目的は分かりますが、放映権収入や入場料収入の見込めない協会では、この制度が足かせとなり、強化費をすべて使い切れないのが現状です。制度の変更はできないのでしょうか。
JOCから1億円の強化費を割り当てられても、そのまま使えるわけではなく、1億5000万円の経費に対して1億円が支出されるという制度。残りの5000万円は協会が集めなければならない。もし3000万円しか集められなければ、JOCからの支給は6000万円となり、残りの4000万円を使うことはできない。 |
福田 国会で法律を変えてもらわなければならない。変えてくれるよう、JOCから文部科学省にお願いはしているし、これからも主張し続けていく。経費の3分の1を集めるのは大変で、この制度下では強化が追いつかない。2020年に東京にオリンピックが決まれば、追い風になるとは思う。
以前とは比べものにならないほど華やかになった全日本選手権だが、有料大会への壁は厚い
福田 旧社会主義国のみならず、外国の強いところは国から100パーセントの補助が普通。事務局の人件費も賄われていて、協会職員は国家公務員だ。日本は自分たちで集めなければならない。競技団体は日本を代表して闘う選手を派遣するところ。そこのスタッフの人件費や部屋代、通信費などが国から出ず、ボランティアに頼らなければならないなんて、こんな馬鹿な話はない。裕福な協会は会長が手当をもらっているが、レスリング協会の会長は1円ももらったことがない。出すばかりだ(笑)。
■有料入場大会実現に大きな壁
――サッカー協会やバレーボール協会は、大会の入場料収入が大きいようですね。レスリング協会も、オリンピックで目立ち、国民栄誉賞が出て世間にアピールできている今が脱皮の時期ではないでしょうか。
福田 有料で全日本選手権をやったこともある。しかし、入場料収入は数百万円にしかならない。有料大会にすると会場使用料が高くなるほか、有料に見合った会場設置の経費や人的経費等がかかり、当然大赤字になる。それなら、無料にして多くの人に見てもらおう、という方針でやっている。サッカーやバレーボールのような見て分かりやすいスポーツは観客も多く来る。ルールが難しく、一般の人が見てよく分からないスポーツは観客を集めることは厳しい。
代々木競技場第2体育館の場合、入場無料なら休日1日の使用料は13万1000円。もし、1000円の入場料を取る場合だと19万7000円となり、3000円だと39万4000円となる。会場使用料のほか、光熱費、宣伝看板を掲げたり物品販売した場合の場合の体育館への支払い等がかかる。入場無料の現在でも、3日間使用での支払いは500万円を超える。 |
――どこかで、有料大会に踏み切るべき時が必要なのではないでしょうか。
福田 メジャーな存在になった時、いつかはそういう時が来てほしい。レスリングの場合は、何かとコラボレーションをして入場料を取るなどから始めなければならないでしょう。
■人気向上のためのアイディアを積極的に出してほしい
――サッカーやバレーボールは人気の芸能人を会場に呼び、一緒に応援させることで会場に足を運ぶ人を増やしました。
福田 ボランティアでやってくれるのなら、やりたいね(笑)。高額のギャラの支払いが必要となると、採算がとれるかどうか、という問題になってくる。
スポーツ界のみならず、芸能界でも顔の広い吉田沙保里選手
福田 いいことですね。やれるのなら、やるべきでしょう。友情出演ですね。交通費程度で足を運んでもらえるなら歓迎したい。
――若い協会スタッフの中には、そうしたことを考えている人は多い。お金の問題が立ちはだかるためか、なかなか現実化しない。バレーボールやサッカーのメジャーへの道を見習うべき点はあると思う。
福田 企画を積極的に出してほしい。出してもらってこそ、採算を考え、できるかどうかの判断ができる。アイディアがあれば出してほしい。出さなければ何も進まない。今のレスリング協会は旧習に固執する頭の固い人間の集団ではない。頭を柔軟にして、いろんなものを取り入れることがレスリングを盛んにする方法だと思う。ただ、最終的に勝たなければならない。目的と手段を間違ってはならない。