2011.09.14

【世界選手権第2日】グレコローマン60㎏級・松本隆太郎(群馬ヤクルト販売)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 【イスタンブール(トルコ)、文=池田安佑美、撮影=矢吹建夫】昨年銀メダリストの松本、初戦で散る-。グレコローマン60㎏級の松本隆太郎(群馬ヤクルト)は、初戦(2回戦)で今年の欧州王者のレバズ・ラシヒ(グルジア)にストレートで敗退。そのラシヒが決勝へ進まなかったため、銅メダルへの敗者復活戦にも回れず、1度の試合で大会を終えた。

 昨年の世界選手権でも対戦した相手で、松本は相手の作戦を「腕を取りに来る」と読んでいた。だが、想定外だったのはその強さ。「去年以上に強烈だった。もっとスタンドで追い込みたかったのに」と、腕を取られたままで自分の形に持ち込めなくスタンド戦が終了してしまった。
 

腕をがっちりと取られ防戦する松本

 グラウンド戦でも予想外のことが起こった。クラッチが去年以上に強烈に組まれてしまったこと。「切る練習はしていたけど」と想定外の強さに対応できず、動きを止められてローリングを決められ2失点。第1ピリオドを失った。
 
 第2ピリオドのスタンド戦は松本の形にもっていきたかったが、「空回りしてしまった」(松本)。前に出ようと意識するあまり、気持ちだけが先に出て、組み手がおろそかになったり、足が出なかったりと、心技体が伴った攻撃ができなかった。残り30秒のグラウンド攻撃でも得点ならず。昨年2位から一転、まさかの初戦敗退に終わり、今回の順位は42人中38位と大幅にランクダウンしてしまった。
 
 大会第2日も初日に引き続きファイナルに一階級も残れず、五輪枠獲得最有力候補でもあった55㎏級、60㎏級の2階級でも及ばなかったことは、日本チームにとっても想定外のこと。長谷川、松本に限っては、コーチ陣の構想で今シーズンの主な海外遠征のメンバーから外し、手の内を隠して世界選手権に臨む作戦を立てた。近年は、国立スポーツ科学センター(JISS)のビデオライブラリーなどのデータが充実しているため、本人が海外遠征をせずに、いろいろな分析や研究ができ、長谷川と松本は国内で調整を続けていた。
 
 だが、佐藤満男子強化委員長(専大教)は「我々のやり方が裏目に出てしまった。やはり、海外での実戦を積ませるべきだった」と厳しい表情で話し、12月の全日本選手権後、ナショナルチームには多くの海外遠征を積ませるプランを明かした。
 
 想定外なことが続き、自分の力を発揮できなかった松本。しかし、「自分たちがやってきたことは間違ってない」とキッパリ前を向いた。夏場の合宿でたたき出したフィジカルの数値は確実に世界で闘う自信になっている。五輪予選はまだ始まったばかり。今大会のつまずきを生かし、次回のアジア予選で五輪出場を目指す。