※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
永続的な金メダル獲得に不可欠な次世代の育成
リオデジャネイロオリンピック、2020年オリンピックを目指した取組み
−2012年ナショナルトレーニングシステム(NTS)ブロック研修会−
日本協会・強化委員 久木留毅(専大教)
今年の夏に開催された第30回オリンピック競技大会(2012/ロンドン)において、レスリング日本代表チームは実力を遺憾なく発揮し、4個の金メダルと2個の銅メダルを獲得した。中でも伊調馨選手と吉田沙保里 選手の3大会連続金メダル獲得は歴史に残る偉業となった。
一方、男子は、24年ぶりに悲願であった金メダルを米満達弘選手が獲得した(1988年ソウル・オリンピックの佐藤満 強化委員長以来)。さらに、男子選手による3個以上のメダル獲得も24年ぶりであり、強化方針の正しさを証明した。
今回のレスリング日本代表チームの活躍は、選手の卓越した努力、強化委員会の綿密な強化戦略、そしてスポーツ医科学サポートが結集した結果であった。しかし、それだけではなく、当協会が11年前(2002年度)から将来オリンピック競技大会等で活躍できる選手育成を目的に整備してきた一貫した指導体制(ナショナルトレーニングシステム=以下NTS)が大きく関与していた点も見逃せない事実である。
伊藤広道・強化副委員長(左端ら)九州ブロックの指導陣(宮崎)
今年も全日本選手権大会が終了した翌日から、全国を6ブロック(北海道•東北、関東、東海•北信越、近畿、中国•四国、九州)に分けて協会が推進するNTSブロック研修会が開催されている(12月24日〜28日)。
ジュニア層の育成は、4年後のリオデジャネイロ・オリンピックだけでなく、8年後の2020年オリンピック以降の強化につながる重要な取組みであることは言うまでもない。本協会では、日本オリンピック委員会(JOC)加盟団体の中で、いち早く、2001年に強化委員会が中心となり、高校の指導者の協力を得てモデル事業を展開した。
2002年には、全国を6ブロックに分けて現在のNTSの基盤を作り、国が推進する一貫した指導体制を実施してきた。ブロック研修では、ナショナルチームのコーチとオリンピック代表を含むトップクラスの選手を指導者として派遣し技術指導と実践練習を組み合わせた内容を実施している。
今年も各ブロック約200名前後の高校生レスラーが参加し、多くの技術修得に努めている。さらに、中学生の参加も年々少しずつ増えてきている。写真は、各ブロックにおいて指導をするナショナルチームのコーチ達である。早い段階からナショナルレベルの指導と出会うことは、ジュニアレスラーにとっても良い刺激となる。
【上】和田貴広・国士舘大コーチによる指導、【下】iPadによる映収録(九州ブロック)
今回のロンドンオリンピック代表選手9名(男子)は、全てNTSで発掘•育成され、学生代表およびナショナルチームへと上がっていったメンバーであった。このシステムのさらなる充実が、リオデジャネイロ・オリンピックや2020年オリンピックで活躍する選手を発掘•育成することに繋がることは間違いない。
また、毎年2月にNTS中央研修会を開催しており、来年は2月20日より東京都北区の「味の素ナショナルトレーニングセンター」で実施予定である。2009年よりナショナルチームの合宿と同時期に開催し、参加した選手からは好評を得ている。
以下は、中央研修会でのプログラムの内容案である。
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1) レスリングの技術指導(フリースタイル/グレコローマンスタイル共にナショナルチームコーチより指導)
2) 実践練習(オリンピック代表選手、日本代表選手、学生代表選手との実践練習)
3) レスラーに必要な栄養の知識(国立スポーツ科学センター栄養スタッフの講義を受講)
4) レスラーに必要なウエイトトレーニングの知識と技術(国立スポーツ科学センタートレーニング体育館スタッフによる講義と実技の指導)
5) トップアスリートに必要なアンチドーピングの知識(日本アンチドーピング機構スタッフの講義を受講)
6) トップジュニア選手の形態・体力測定(ナショナルチームと同様の測定)
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当協会のNTS中央研修会は、国の方針に沿ってJOC、国立スポーツ科学センター、日本アンチドーピング機構等の協力を得て実施している。長期的な視点に立ったジュニアレスラーの育成は、国際競技力向上のためには不可欠な施策である。この意味からも、NTSをさらに充実させて行く必要がある。