※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)
五輪代表選手の実力を見せた高谷
準決勝の嶋田大育(国士舘大)戦で腰を痛めたそうで、決勝は慎重な試合運びに終始した。決勝は「言い訳になるけど、腰が痛くて攻めるのに苦労した」と振り返るように、2ピリオドとも北村公平(早大)に先制を許す展開。それでも、終盤にギアを入れ替えてラストポイントを奪ってしまうあたりは、実力のある証拠だろう。
■希望に満ちたロンドン五輪は初戦敗退
2012年は高谷にとって激動の1年だったかもしれない。世界選手権に出場したことがないというのに、ロンドン五輪予選で勝負強さを発揮し、オリンピックへのパスポートを獲得。しかし、日本代表チーム最年少の23歳に待ち受けていたのは、1回戦敗退という厳しい現実だった。
「タックル王子とか呼ばれながら、オリンピックではタックルひとつできずに負けてしまった」。もちろん悔しさはあった。反省もあった。ただし、前に進もうとする高谷に悲壮感はなかった。切り替えの早さは絶対の長所だ。
「僕は若いので、オリンピックに出たからといって休んでいたら、何をやっているんだと怒られる。オリンピックが終わって、すぐにリオデジャネイロを目指してトレーニングを始めました」。
決勝で北村公平と闘う高谷
■五輪金メダリストの動きをイメージして闘った
今大会の決勝、最後に試合を決めた攻撃は、ロンドン五輪同級金メダリスト、ジョーダン・バローズ(米国)の動きをイメージしながら繰り出したのだという。「身体能力には自信がある。海外でレベルアップしていけば、オリンピックで金メダルを獲れると思っています」
高谷はリオデジャネイロ五輪が開催される2016年を27歳で迎える。心技体が充実するリオはこそが、勝負の五輪だ。