2011.09.14

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※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 2011年トルコ世界選手権が開幕します。勝った、負けた以外の世界選手権の裏側を報じる恒例の編集者ブログ(取材日記)をお届けします。(樋口)


9月10日(土) 9月11日(日) 9月12日(月) 9月13日(火) 9月14日(水)
9月15日(木) 9月16日(金) 9月17日(土) 9月18日(日) 9月19日(月)

 【9月12日(月)】

 いよいよ試合開始。初日は何があるか分からないので、早めにホテルを出る。タクシー代約10トルコリラ(約450円)。地下鉄(2リラ)だと、待ち時間や歩く距離があるので、ここはタクシー利用に限る。

 現実問題として、このあたりは歩行者に配慮された道路構造になっていないから、最寄りの駅でおりても道路(高速道路的)が邪魔し、歩道橋や地下道などもない。直線距離で500メートルくらいであっても、かなり歩くことになる。この日、地下鉄で来た佐野美樹カメラマンによると、「2キロは歩いた」とか。

2年前のデンマーク大会の写真。熱い抱擁で別れた保高記者と松川記者が再開

 記者室へ行くと、2年前のデンマーク世界選手権に来ていた日本テレビのオランダ特派員の松川美樹さんの姿が。「あ、デンマークの時の」と言うと、「え? 覚えていてくれたんですか」といった感じ。覚えていますよ。最後の日の夜、保高記者と熱い抱擁をして別れを惜しんでいたんですからね。とても印象に残っています。今回もしっかりと愛し合う2人を見せてくれるでしょうか。

 プレスルームの奥には簡易レストランがあり、タダで食べられるようだ(後で分かったことだが、お昼だけのサービスで、夕食はないことが判明。どちらかというと夕食の方が必要なんだけど…。会場の周囲には店とか何もないのです)。

 記者席には、5列(1列20席くらいある)あるうち、前の2列に有線LANがあるけど、後ろの3列にはLANなし。それは困るんじゃないかなと思っていたら、無線LANもとんでいるのだそうです。

 じゃあ、有線LANなんて必要ないんじゃない? と思ったけど、有線LANの方がスピードが速いのでしょう。「有線LANを差していたら、無線LANはつながらないの?」と聞いたら、保高カメラマンが「ユウセン(有線)がユウセン(優先)になるんでしょ」と言って、何かに気がついて大笑い。増渕広報担当が「樋口さんより先に言っちゃダメでしょ」と一喝。全くだ!

 さて試合開始。4面マットで多くの試合数をこなしていく。例によってカメラマンとセキュリティー(警備)のトラブル発生。「ここでは撮るな」「そこも駄目だ」で、それに対して抗議すると、「論議するつもりはない」と言ってカメラマンの言うことを聞こうともしない。

広いスペースに設けられた記者席。こちらはよかったが、カメラマンスペースは最悪

 保高カメラマンが優しい口調で(?)いろいろ交渉するが、馬の耳に念仏で何も進展しない。カメラマンの世界のことなので筆者はでしゃばっていないけど(でしゃばったらケンカになり、中指を突き立ててさらなるトラブルになり、病院に送られるかもしれない)、レスリングのような世界的にマイナーなスポーツは、メディアに露出することでその存在をアピールしていかなければ将来の存在はない。トルコ協会も国際レスリング連盟も、もう少し配慮してほしいものだ。

 ビル・メイさんが顔なじみのFILAプレス委員会のチャバ・ヘゲダス委員長に交渉してくれたが、どこまで改善されるものか。

 それにしても、館内のトルコ選手への声援はすごい。会場が広いので満員とは言わないが、トルコの選手が攻撃すると大歓声。このフィーバーを見ていると、この国ではレスリングはかなりの人気競技なのだろうかと思わされる。

 でも、イランにはかなわないだろう。1992年以来、イランには行っていないので、今はサッカーなどに押されているのかどうか分からないけど、超満員(すべて男)の会場でイラン選手が優勝した時、本当に耳の鼓膜が破けるかな、と思ったあの耳の痛さ、今でもしっかりと覚えています。あのフィーバー、いつか日本でもほしいと思って、この19年、やってきました。

 話は元に戻りますが、この会場では、観客のトルコ選手がピンチになると(相手への)大きなブーイングが起こります。国民の感情として当然だろうが、完全に負けた時にもブーイングするのはおかしいよね。スポーツの世界、負けは負けと認めなければ。イランは強者を純粋に称える国なので、決勝でイラン選手が負けても、こういったブーイングは起こらなかったような気がする。こういったイラン賞賛記事を書くから、「イラン人ですか?」なんて言われるのだろうか。

会場ロビーに展示してあったレスリングの油絵。

 試合はスケジュールが大幅に遅れ、開会式の時間の午後6時半になってもまだ敗者復活戦まで行っていない。「いったい何時までかかるの?」などと記者席から不満の声。7時半、まだ消化していない敗者復活戦を残したまま開会式がスタート。言葉が分からないので、よく分からなかったけど、トルコの大統領(?)が来たみたい。

 会場散策でロビーに行ったら、大統領を一目見ようと黒山の人だかり。大統領の姿、そんなに見たいもんかなーーーー。筆者は野田首相が会場に来ても、見たいなんて全く思わないけどね。

 それでこの開会式が長くて、長くて。大統領のあいさつとかが終わって、多少のダンスなどの披露は予想していたけど、延々と続き、1時間の予定が1時間半へ、こんな踊りを披露されたって疲労がたまるだけです(!)

 結局、すべての試合が終わったのが10時半。その後執筆し、会場が暗くなりそうだったので、増渕広報担当が100キロの重りをかついでいるかのように疲れ果てていたので、そのシーンをパチリ。「仕事が長かったから、なんて書かないでくださいね。長谷川が負けたからなんですよ」とのこと。

 長谷川選手は青山学院大の後輩で、ふだんはため口で話をしています。同じく青山学院大で長谷川のはるか上の先輩の私も、そんな言葉では話さないのに…。それだけにショックなのでしょう。長谷川選手の五輪出場権獲得は、来春のカザフスタンでぜひ実現しましょう。

 

 

月11日(日)】

 矢吹カメラマンは5時半に外から聞こえてきた大音響のコーランに目がさえてしまい、その後寝られなかったとか。朝一番で朝食会場に行ったら、やはり朝の強いビル・メイさんがいて、いろいろと情報交換。メイさんは元日本協会広報委員で、本HPの英語サイトを執筆。チェコから前日の3時ころに来て、ひと足先にチェックインしていた。また、このホテルには名古屋から2人の記者が泊っていることも判明した。

 私は朝10時前に起きて朝食。その後、メイさんと1年ぶりの再会。日本の味(おつまみなど)を渡す。外国へ来た時は、メイさんがいると言葉に不自由しないので心強い。その後、矢吹カメラマンと会って「コーランの音がうるさくて…」とのコメント。「何、それ?」と筆者。「聞こえなかったんですか? わけないでしょ」と言われたが、全く気がつかずにグーグー。やはり長旅で疲れていたんだな。

 筆者は、2人が行った朝食会場と違うところに行ったらしい。大きなホテルでもないのに、朝食会場が2ヶ所もあるのか、と不思議に思った。あとで判明したことだが、私が行ったところはイスラム教のための朝食会場(豚肉などは使っていない)だったのです。よく「イラン人に似てる」と言われるけど、無意識のうちにもイスラム教の世界に足が向いてしまうのだろうか。

12時前に大会の本部があるWOWホテルへ。ホテルが違う増渕記者には12時にWOWホテルに来るように伝えておいたが、例によって姿はなし。いつものことだから、怒る気力もなし。

 ほどなくしてIDカードが発行されたが、顔写真もなく、簡単なもの。これだったら、このIDをだれかに渡すこともできる。昔のアジア選手権では珍しいことではなかったけれど、世界選手権で写真なしのIDカードなんて初めてじゃないかな。

 先輩記者を十分に待たせて増渕記者が登場。例によって、ホテルの部屋がなかったとか。女子チームのアザーオフィシャルだけど、チームと同じフライトで来なかったら、トラブルが生じたようだ。朝到着し、役員と押し問答があって時間がかかったとか。その真偽は不明だが。

 ホテルや会場周辺には食事処がないので、食事街へ繰り出すことに。保高記者はイスタンブールには10回くらい来ているそうだ。「最近は来ていないですよ」とのことなので、「一番最近はいつなんだ?」と来たら、「2009年です」。それは「最近」て言うんだ!

 イスタンブール通の保高記者をツアーコンダクターにして、地下鉄で数駅。小休止のあと、会場に着いて記者席や記者室、LANの有無などを確認。その他、記事の準備や確認をしたあと、6時半になったので計量会場へ。狭いスペースに大勢の選手がひしめいていて、とても中に入る気になれない。

 出口で選手が出てくるのを待つ。保高&増渕からは何の連絡もないので、「また遅れやがって」と思っていたら、後になってすでに中に入っていたことが判明。計量会場というのはシングレット姿だけど、裸に近いこともあって、いろんな民族の体臭が充満していて、男でも尻ごみする場所。まして、こんな狭いスペースではなおさら。

 そんなところに入っていて、「長谷川、いい組み合わせよーーーー」とニコニコ顔で出てくるのだから、2人のレスリング・ラブってすごいなあ、と実感。

イスタンブールのトラム

街に出られる唯一の日、トルコ料理で昼食

アイスクリーム売り場でパフォーマンスを受ける増渕記者

アジアとヨーロッパを結ぶファーティフ・スルタン・メフメト橋


 【9月10日(土)】

 「飛んでイスタンブール~」。私のipodに入っているこの曲(古いね~。だれが歌っているか分かるい人は、かなりの年齢の人じゃないかな)、とても気にいっているのですが、まだイスタンブールには行ったことがないのです。トルコの首都アンカラへ行く時に乗り換えたことはありますけどね。

 アンカラは知っているので、何となくイメージは分かりますけど、お気に入りの都市に行くって、何となくウキウキしますよね。

 樋口、矢吹建夫、保高幸子の3人は成田空港を正午に出る飛行機でイスタンブールへ(報道のまとめ役として現地に行く増渕由気子はこの日の夜、羽田~関西空港経由で向かいます)。10日正午発というと、女子チームの出発と同じ? 確かに時間は同じですけど、私たちはアエロフロート航空を使い、モスクワ経由で行きます。

 理由? 安いからに決まっているでしょ! トルコ航空より4万円近く安いんですよ。そのため、トルコ航空組が現地の午後6時にイスタンブールに着くのに対し、私たちはモスクワで5時間待って、深夜1時にイスタンブール入りします。

 1人でも多くの人間を現地に送るための苦肉の策。私のエアチケットは、楽天のポイントで買ったものなんですよ(涙)。まあ、タフさと節約精神がなければ、報道記者は務まりません。

 トルコ航空は第1ターミナルの南ウイング、アエロフロートは北ウイング。歩いても数分の距離だから、チームにあいさつしに行こうかとも思ったけど、ラフな服装だし、出発取材で報道陣も集まっているところでTシャツ姿ではよくないと思い、あいさつせずにゲートイン。

 定刻の12時を15分くらいオーバーして飛行機が動き出し、滑走路へ。窓の向こうにトルコ航空の機体が見え、私たちのすぐ後ろにつきました。左にカーブした時、「窓に栄和人監督の姿でも見えないかな…」と思って目を凝らしましたが、見えませんでした。残念!

 約10時間のフライトでモスクワ空港へ。私、デルタ航空のシルバー会員だから、ラウンジを使わせてもらえるかな、と思って、トライしたけど、シルバーじゃダメとのこと。もう少し頑張って乗って、ゴールドにならないとダメか。

 そのため、ビールを飲んだあと、空港の固いイス(手すりがあるので、横にはなれない。たぶん、横にならせないように手すりを作っているのでしょう)に窮屈な姿でウトウト。保高記者は、コーヒーを飲みに。そこで、イラン人から話しかけられ、「私の彼女になってもらえませんか?」って言われたんだって。外国人って、直球勝負だよね。

 で、保高記者がどう答えたかって? 「はい」って言ったとか…(これは私の推測!)。モスクワ空港ではモンゴルの女子選手団がウランバートルから到着し、私たちと同じフライトでイスタンブールへ行きます。日本語の話せるコーチに聞いたところによると、59kg級の世界チャンピオンは不出場で、別の選手が出るそうです。国内大会で負けたのかな?

 でも同行はしていました。ほとんどの階級で2選手が来ているみたいです。偵察なのかな? 「朝青龍は?」と聞くと、「明日、来るはずです」だって。

 深夜1時にイスタンブールの空港へ到着。7月下旬にトルコに新婚旅行に行った某協会事務局員さんの話によると、空港での両替が一番いいとのことなので、ここで両替し、タクシーで予約してあったホテルへ。

 シングルで1泊65ユーロー(約7000円)。出発の何日か前、13日に現地入りするフリーライターの布施鋼治さんが、このホテルを予約しようとし、私が予約したサイトで見たところ、1泊500ユーロー(約5万4000円)の金額だったそうです。

 「そんな高いホテル、手が出ません」というメールに、私もびっくり。でも、世界選手権の期間以外は65ユーローで出ていました。世界選手権の客を当て込んだ便乗値上げだね。私たちも1泊500ユーロー請求されることはないだろうな、とちょっと心配になりました。