※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
満身創痍となったV7の胴上げ! 2024年西日本学生秋季リーグ戦は、決勝で周南公立大が近大を5-2で撃破。単独3位を更新する7年連続の優勝を遂げ(通算25度目)、守田泰弘監督の体が今回も宙を舞った。「7連覇」にちなんで、選手は7度、その体を宙に上げたが、その直後、守田監督は激痛に顔をゆがめ、部長やコーチ、選手の胴上げを横目にマットサイドにうずくまった。
▲春季は6回上がらなかった胴上げ(関連記事)。今大会は「7-7」の胴上げを受けた守田泰弘監督
激戦続きの内容に、体が悲鳴をあげたのか? そうではなく、大会の2週間くらい前に腰痛に襲われ、体は万全の状態ではなかったからだ。それでも選手からの喜びを体で受け止めなければならない。試合前から「胴上げだけは」と覚悟を決めて受けた優勝の儀式。
予想以上に体への負担がかかり、きつさに顔をゆがめた試合後だったが、選手の踏ん張りに表情は暗くない。「(優勝が)積み重ねってくると、重みを感じます」と快挙を振り返りつつ、「ここに至るまで、部長、コーチほか多くの人に支えられている7連覇だと感じます」と周囲の応援に感謝した。
第1試合が大激闘の内容となった。125kg級の試合で、白星を計算していた竹内遼斗が千葉大輝を相手に1分30秒で7-0とリードしながら、大技を持つ千葉の粘りに遭って8-8(相手有利)へ。それでも11-8、13-8と逆転し、13ー12でラスト10秒のカウントダウン。
勝利を目前にしたが、ラスト3秒でがぶり返しを受けてしまって痛恨の逆転負け。合計4度のチャレンジ(各2回)やインジュリータイム(負傷の治療)があったこともあり、ホイッスルが鳴ってから試合終了まで約22分。“3試合分のエネルギー”を使いながら、終了間際の逆転負けを喫したことは痛手だったはず。
だが、続く61kg級の松田來大が、あっさりとテクニカルスペリオリティで勝って流れを引き戻した。このあと、61kg級の小石原央義主将、74kg級の西村将希、86kg級の権田龍の4年生が奮起して3連勝。春季に続いて権田龍副主将の勝利がチームの勝利を決め、雄叫びとともに周南公立大の7連覇が決まった。
第1試合を落としたのは痛かったが、守田監督は「続く選手の顔を見たら、大丈夫だ、と感じました」と、総合力での実力に確信を持っていた。
第4試合のマットに立った西日本学生選手権王者の西村は、同70kg級王者の畔上浩輝との西日本学生王者との対戦。どちらに転んでも分からない闘いだったが、ワンチャンスをものにしてフォール勝ちをおさめた白星が「大きかった」と振り返った。松田が相手に流れが行きそうな雰囲気を止め、小石原が主将の役目を果たしてくれたからの勝利であろう。団体戦はチームの流れが大きく左右することを感じさせてくれた一戦だった。
3年連続で春秋連覇という結果を残し、25度の優勝は、いつしか福岡大の28度、関大の27度に迫る優勝回数になっていた。今年は「4年生が頑張ってチーム一丸のムードをつくってくれました。下級生はその背中を見て、意気込みを感じ取ってくれたと思います」と振り返った今年の闘い。だが、優勝する度に口にしていた「ここがゴールではない」という言葉が今回も出てきた。
来年に見込まれる歴代2位タイの「9季連続優勝」へ向かう一方、全国に対抗できる戦力の構築が目標だ。「高校時代のスーパースターが入ってくるわけではない。目標をもってしっかり頑張ってくれた選手が結果を出している。4年間をかけ、しっかり育てたい」と話し、変わらない指針を示した。
「この場を借りて、選手を育て、送っていただいている高校やキッズの指導者に感謝の気持ちをお伝えしたい」とも言う。少子化で選手を集めることも難しくなっている時代だが、それでも「選手を発掘し、いい選手を育てて送っていただきたい」と期待した。
腰痛のため、ここ2週間は選手の相手をする指導はできず、もっぱら「言葉の指導だった。選手に気を遣わせてしまったかもしれない」と笑う。一時は大阪行きも断念しなければならないかも、と思ったようだが、選手の気持ちを考えると、無理をしてでも「7(連覇)-7(度宙を舞う)」の胴上げを受けたい気持ちを表した。
10日後には全日本選手権があり、一人でも多くの選手を上位へ入賞させたいところ。「腰を万全にして向かいたいです」と話し、今年最後の闘いへ挑む7人の学生選手に期待した。