2024.12.04

【2024年全国中学選抜U15選手権・特集】勝ち急ぐことのない闘いで3連覇達成、来年は世界へ再挑戦…男子62kg級・齊藤巧将(東京・日大ジュニア)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 

 一昨年、この大会史上最重量級(57kg級)で1年生王者に輝いた齊藤巧将(東京・日大ジュニア)が、11月30日~12月1日に行われた2024年東京都知事杯全国中学選抜U15選手権の62kg級で優勝。3連覇を達成し(昨年も62kg級)、東京都知事杯を獲得した。

 初戦からの3試合はいずれも第1ピリオド、無失点のテクニカルスペリオリティ勝ち。準決勝と決勝はともにフルタイムの闘いとなったが、着実な試合運びで白星を引き寄せた。3年連続優勝とともに、3月のU15アジア選手権代表選考会、6月の全国中学生選手権に続いての優勝で、「ひと安心しました」と声が弾んだ。

▲3連覇を達成した齊藤巧将(東京・日大ジュニア)。両親、妹とともに記念撮影=撮影・矢吹建夫

 昨年は階級を上げたばかりにもかかわらず、6試合中4試合でフォールかテクニカルスペリオリティ勝ち。今年6月の全国中学生選手権でもフルタイムにもつれた試合は1試合のみだっただけに、今大会はその上をいく内容も期待されたが、準決勝と決勝はポイント勝ち。

 決勝の相手は全国中学生選手権準決勝で闘い、テクニカルスペリオリティ勝ちした相手だが、今回は第1ピリオドを3-0とリードしたあと、第2ピリオドはやや守ってしまった感もある内容だった。

 3連覇がかかっているので「そんなに強引はいけませんでした。勝つことが大事な試合でしたから」とのこと。圧勝を意識するあまり、無謀ともなってしまう攻撃を封印し、「泥臭くても勝つことにこだわりました。ロースコアの勝利であっても、勝ちは勝ちですから」と言う。

3連覇の原動力は昨年の全国中学生選手権の黒星

 ただ、最初のテークダウンのときに“瞬間フォール”とも言えるまでに相手を追い込んでおり、実力差を見せたことは確か。1回戦から全体を通じて「練習通りの動きができていました」と振り返った。

▲一気にフォールの体勢へ持ち込めそうなチャンスもあった決勝戦=撮影・矢吹建夫

 2年前のこの大会で1年生王者に輝き、父母の双方の祖父から続く血筋を持つ選手として脚光を浴びた(関連記事)。しかし2年生となって臨んだ全国中学生選手権は準決勝で敗れて3位。1年生王者になったことで「浮かれていた面があったのかな」と振り返り、勝ち続けることの難しさに直面した。

 一方で、負けたことで「その流れを断ち切ることができた」のは事実。「あの負けがあったから、この大会の3連覇につながったと思います」と言う。黒星をエネルギーにしたがゆえの3連覇だった。

 来春から東京・自由ヶ丘学園高校への進学を希望している。国内で勝ち続けることを目指すとともに、今年はうまくいかなかった国際舞台(今年のU15アジア選手権は2回戦敗退)へ再挑戦だ。「この優勝で天狗になってはダメ。初心に戻って、チャレンジャーとして頑張りたい」と、昨年の二の舞を演じないことを肝に銘じる。技術的には、「自分の持っている技をしっかりと極めたい」と言う。

▲勝ったあと、マット上を走り回って喜びを表した=撮影・矢吹建夫

快挙を支えたのは日大レスリング部の選手

 セコンドで指示を出していた父・将士監督(日大レスリング部でも監督)は「素直にうれしいです」と相好を崩す。決勝は「大胆に攻めなさい」と言う一方、「強い選手が相手だから、2-1でも、最後に手が上がればいい」との指示を出し、ていねいな試合を求めた。今年のU15アジア選手権で負けた試合が「勝ち急ぎ」だったため、そのような指示になったようだ。

 練習は日大の学生選手に加わってやっており、この快挙の裏には日大選手の協力があった。どの選手も練習相手になってくれ、高度な技術を指導。その中で実力をつけていったことは間違いない。齊藤監督は「相手をしてくれた学生選手全員に本当に感謝しています」と言う。

▲優勝し、親子で喜びを分かち合った=撮影・矢吹建夫

 来年春からはその練習環境から卒業し、強豪高校の中で実力を磨くことになる。同監督は「一緒に頑張りたい選手もいて、そうした環境の中で練習したい、という本人の意思での選択」と説明した。同高校は合宿所制ではないので自宅からの通学となり、朝練習に参加するため早起きが必要になる。齊藤監督も日大の朝練習に参加するため毎朝4時50分が起床時間。「(早起きしての通学も)修行ですよ。2人で起こし合います」と笑う。

 高校や世界のレスリングは「甘くないことは分かっています。チャレンジャー精神で頑張ってもらいたい」と話し、同居は続くが自分の手元を離れる息子の健闘を期待した。