※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫)
2010年春に起きた部員の不祥事により、約2年間の出場停止処分を受けた関大が、西日本秋季学生リーグ戦の二部リーグで優勝。来季の一部リーグ昇格を決めた。(右写真)
処分が解除されたのは今春で、「2年間」と言う出場停止は、正確な記録はないが、レスリング界の処分では最長の長さと思われる。オリンピック選手も輩出した(東京五輪金メダリスト、市口政光)伝統大学が、長い謹慎を乗り越え新たな飛躍を目指す。
安田忠典監督は試合後、会場に駆けつけてくれたOBに深々と頭を下げ、苦しかった日々を支えてくれたことを感謝。優勝の喜びを問われると、「周囲にご迷惑をおかけしてきました。喜ぶよりも、まずお詫びしたい。また仲間に加えてもらい、闘える場を与えてもらったことに感謝します」と話し、笑顔はなかった。
■大学、OB、保護者、そして選手の総力を結集しての復活
大学は事件を深刻に受け止めた。「廃部」という声すらあがった中、講演会や読書会、ボランティア活動等の更生プログラムを課して再起を求めた。スタッフを一新し、最後は学生が大学職員の前でプレゼンテーションして部の更生を誓い、復帰が認められた。
二部優勝のあとにも十分なミーティングを行い、学生スポーツのあり方を教える安田監督
安田監督は「新しいチームとして再スタートしました。選手は主体性を持って、本当によく練習していました。その結果が優勝だと思います」。選手の頑張りを特に感じることができたのが、春季に負けた九州共立大との一戦。選手は相手を徹底的に研究し、「この相手を絶対に倒す」という意識を前面に出して練習を積んできたという。
半年間の成果を試す試合は、春季2-5だった結果が4-3での勝利へ変わった。選手の努力が並大抵のものでなかったことの証明だ。
■2年間、新人の補強もできず! この試練を乗り越えられるか
今大会の一部リーグは、二部から再昇格したばかりの近大が3位に入賞した。来季の関大も勢いに乗って一気に3位、あるいは優勝争いに加わりたいところだが、2年間の活動停止処分の間は推薦で選手を獲得することができず、選手の補強が行われなかった(現在いる1、2年生は大学に入ってからレスリングを始めた選手)。
5回戦の大体大戦。66kg級の倉谷晋平(3年)が勝って優勝を決めた
OB会の倉橋裕会長は「春のリーグ戦では結果を出せませんでしたが、この半年間、選手たちは熱心に練習に励んでくれました。目標達成できてうれしく思います」と、時に詰まらせて辛かった日々を振り返った。
「(謹慎期間は)学生はボランティア活動などの更生プログラムに取り組み、処分解除へ向けて必死にやってくれた。レスリングと違った試練を乗り越え、精神的にたくましくなったと思います」と続け、「来年はまた厳しい1年になると思いますが、頑張ってほしい」と選手の奮起を期待した。