2024.10.29

【2024年全日本大学グレコローマン選手権・特集】安定した闘いで二冠&2連覇達成、シニアの舞台でどう勝ち抜くか…60kg級・五味虹登(育英大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 

(文=布施鋼治)

 10月23~24日の2024年文部科学大臣杯全日本大学グレコローマン選手権で初の団体優勝を飾った育英大。その中で、最も安定した力を誇っていたのが、8月の全日本学生選手権優勝に続き、この大会の連覇を達成した60㎏級の五味虹登(こうと=3年)だろう。

 初戦から準決勝までの3試合は、いずれも第1ピリオド、無失点でのテクニカルスペリオリティ勝ち。決勝は55kg級でU23世界選手権出場の実績を持つ伊藤翔哉(専大)と対戦し、テークダウンやローリングで着実にポイントを重ね、最後は相手の脇についてからの崩しで加点。第1ピリオド終了間際、10-1のテクニカルスペリオリティで勝利を得た。

▲2年連続優勝を達成し、育英大の団体優勝に貢献した五味虹登(育英大)

 「自分の持ち味はスタンドの部分でしっかり取り切るところと、圧力のかけ方。決勝では練習でやっているいつものことができました」

 今大会の決勝の試合順はアトランダムで、五味は第3試合だった。第1・2試合で同門の長谷川虎次郎(67㎏級)と増田壮兼(55㎏級)が続けて優勝して、勝利のバトンを五味につなげたことも発奮材料になった。

 「流れも大事でしたが、逆に緊張もしました(微笑)。試合に集中することを第一に考えていたので、ちょっと緊張した程度でしたけど」

 その言葉に偽りはない。同時期にアルバニアでU23世界選手権が開催されており、女子55㎏級に同じ育英大に在籍する姉・音々が出場していたが、「減量中で見ていなかった」と振り返る。「僕は僕、姉は姉というわけではないけど、時間が合わなかったですね」

 育英大を選択したのは、1つ上の姉からの推薦もあったが、男子監督に松本隆太郎氏が就任したことが最後の一押しになった。「監督は自分に合ったスタイルを考えてから、しっかりと教えてくれる」と言う。

▲準決勝までの3試合を無失点のテクニカルスペリオリティ勝ち。決勝も終始攻勢をとり、10-1で快勝した

12月の全日本選手権でシニア・トップ選手に迫れるか

 決勝は4月のJOC杯ジュニアオリンピックで自滅のような技で不覚を喫した金澤孝羽(日体大)との一騎討ちを期待する向きもあったが、今月初めの国民スポーツ大会(佐賀)でリベンジを果たしているので、特に意識はなし。「自分の試合に勝つこと」だけに専念していた。

 そんな五味の成長に、松本監督は目を細める。「毎日一緒に練習しているので、強いことはよく分かっている。あとは、どうやって世界に打って出るか。国内でも60㎏級にはまだ5~6人、強い選手がいる。その中でどうやって勝ち切るかが重要になってくる」

 男子グレコローマン60㎏級といえば、今夏のパリ・オリンピックで文田健一郎(ミキハウス)が金メダルを獲得したばかり。国内の主要大会では、文田の大学(日体大)の後輩である鈴木絢大(レスター)稲葉海人(滋賀県スポーツ協会)が後を追う勢力図が続いていた。

 五味は今年7月のU20アジア選手権で優勝しているが、5月の明治杯全日本選抜選手権では準決勝で稲葉に1-6で敗れている。まだ全日本トップ選手とは力の差があるのが現実だ。

 次に出場する大会は12月の天皇杯全日本選手権が予定されている。シニアの舞台でも、虹を登れるか-。

▲学生最強を証明した五味。12月の全日本選手権では、日本トップ選手にどこまで迫れるか