※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治)
うれしい初の団体優勝だ。10月24日、東京・駒沢屋内球技場で行なわれた2024年全日本大学グレコローマン選手権の最終日、5階級を制した育英大が大学対抗得点の栄光を手にした。決勝に進出した5選手とも優勝するという勝負強さを見せつけた。
東日本学生リーグ戦、全日本大学選手権を合わせても初の団体優勝だったので、松本隆太郎監督は喜びいっぱいと思いきや、全試合終了後は率先して会場の片づけに励んでいた。この大会の大会委員の中では“若手”。雑用を積極的にこなす。
「自分が育英大に入って4年目になります。今の4年生の三谷(剛大)や増田(壮兼)が入学したときからです。ずっと面倒をみた選手が頑張ってくれ、結果を出してくれたとしみじみ思いますね」
55㎏級で優勝した増田は今大会で最優秀選手賞を獲得。63㎏級の頂きを極めた三谷は決勝で長野野佑利(日本文理大)をわずか39秒、8-0のテクニカルスペリオリティで下し成長ぶりを見せつけた。
松本監督は、キーマンは日体大との直接対決を制した増田と67㎏級の長谷川虎次郎だったと位置づける。「増田は決勝で全日本選抜選手権優勝の大楠健太選手に勝った。増田の前には、長谷川が西田衛人選手(専大=今年の全日本選抜選手権でテクニカルスペリオリティで敗れている)を相手に、終盤、逆転勝ちしていい流れを作ってくれたと思います」
松本監督は部員に「レスリングだけをやっていてはダメ」ということを再三口にしている。「今回のオリンピックで育英大の女子が結果を出してくれたけど、そうなればなるほど、いい見方をしてくれる人もいれば、あら探しする人も出てくる。そういったときに、後ろ指を差されるのではなく、『育英のレスリング部の学生はしっかりしているね』と言われるようになってもらいたい」と力説。
技術も教えるが、「私生活面の指導も厳しいです。そういう指導に学生たちがしっかりとついてきてくれたことが、結果につながったんじゃないかと思います」と言う。
もちろん、8月のパリ・オリンピックで同大学卒業の櫻井つぐみと元木咲良(ともに現育英大助手)が金メダルを獲得したことも、男子部員の大きな刺激になったと感じている。
「『育英大といえば女子』というところから男子は始まっている。でも、『いつまで女子にオンブにダッコなの?』ということは常日頃言っている。今回の優勝で『育英は男子も強いんだよ』という部分を少しは見せられ、よかったと思います」
今後について聞くと、松本監督は今大会で4年連続通算23度目の優勝を逸した日体大や躍進が目立った専大と切磋琢磨しながら闘い続けることが理想と語った。
「そうすることで、最終的に世界に出られる人材を作っていければいい。自分はロンドン・オリンピックで銅メダルだった。パリでは(母校の)日体大出身の選手が金メダルをたくさん取り、育英大の選手は自分が一から育てているという自負があります。最終的には自分が取れなかったオリンピックの金メダルを取れる人材を育てていきたい」
来春、育英大レスリング部には10人以上の男子選手が入部する予定だという。もう「育英といえば女子」とは言わせない。