※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=布施鋼治)
9月28日、山梨学院大の練習に日体大勢が合流。午前と午後の計2回、2時間ずつの合同練習が実現した。大学レスリング界の二強が一緒に練習するのは、昨年2月22日に日体大で実施して以来、2回目。「当初は今年2月に開催する予定だったけど、直前にウチの学生からコロナが出てしまい、延期せざるをえなくなった」(山梨学院大・小幡邦彦監督)ため、今回ようやく実現する運びとなった。
午前の部は普段の練習着で、午後の部はシングレットを着用したうえで、いずれもスパーリング中心の練習となった(写真はいずれも午後の部)。
就職活動やケガで参加できない者もいたが、いたるところで熱気がほとばしっていた。いつもとは違う練習の効果について、小幡監督は「やっぱり同じ相手ばかりだと中だるみじゃないけど、マンネリ化してくるところもある。でも、合同練習だと試合に近い練習をすることができる」と話す。
コーチとして参加した山口海輝(日体大助手)は「同じスパーリングでも午前と午後は違っていた」と指摘した。
「午前中は、慣れない相手とやることで、いつもはかけられない技にかかったりする場面がすごく多かった。午後の部になると、それぞれ修正して、なかなか取らせないような動きをしていたところがよかったと思う」
10月下旬のU23世界選手権と非オリンピック階級の世界選手権(ともにアルバニア)出場を控えた男子フリースタイル79㎏級の髙橋海大(日体大)は「トップを争うチーム同士の合同練習ということで、ふだんの練習では味わえないピリついた空気を感じました」と振り返る。「山梨の選手の粘りやカウンターのうまさと日体の前に出て攻めるというシンプルな強さが、うまく交じりあっていた」
髙橋はみんな強かったと話すが、その中でも男子フリースタイル70㎏級の青柳善の輔(山梨学院大~現クリナップ=髙橋と同じく両大会に出場予定)には手応えを感じたという。「絡みの部分とかいつもできないような間合いというか、善の輔さん流の距離感には自分の中にやりづらさがあって、とてもいい練習になりました」
そんな髙橋に試合で何度か敗北を喫している鈴木大樹(山梨学院大)は「少しは差が縮まっているだろう」と、この機に髙橋の牙城に挑んだ。その結果は?
「彼との差は少しも縮まっていませんでした。やっぱり強いなと思いました。自分は大学卒業とともに引退だけど、内閣総理大臣杯(全日本大学選手権=11月9~10日、大阪)では(主将として)チームを引っ張っていきたい」
練習の合間に自分のチームの選手にワンポイントレッスンを欠かさない山梨学院大の高橋侑希コーチは「ウチは全体的に65点くらい」と厳しい評価を下した。「ウォームアップだけを見ても、日体大の学生はきちんとやっている選手が目についた。レスリングでは練習に入る前の動きや気持ちの作り方も大事。そういうところはまだウチの選手に足りないところだと思いました」
高橋はさらに、両チームの選手によるスパーリングの際、もつれたときの問題点も見逃さなかった。「やられたときに力を抜いてグシャッとなる攻防が時おり見られました。これは日体大の選手にも言えること。試合になったら誰もそんなふうにはならない。練習でもそういうところをなくしていったら、もっとレベルの高い練習ができると思う」
いずれにせよ、両チームにとって、実り多き練習になったことは確か。選手や指導者からは「年に1回」「3〜4ヶ月に1回」「試合がない時期には1ヶ月に一回」と、希望する実施頻度にばらつきはあるものの、合同練習のレギュラー化を望む声が上がっていた。
「一強だと強化にも限度がある。やっぱりライバルがいて、お互いが切磋琢磨して全体のレベルが高まっていくことが理想。合同練習を続けていけば、それはおのずと日本レスリング界全体の底上げにつながっていくと思います」(小幡監督)
早くも3回目の開催が待ち遠しい。