2011.09.13

【世界選手権第1日】男子グレコローマン55kg級・長谷川恒平(福一漁業)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 【イスタンブール(トルコ)、文=池田安佑美、撮影=矢吹建夫】長谷川、3度目正直ならず…。世界選手権初日に金メダル候補として登場した男子グレコローマン55㎏級の長谷川恒平(福一漁業)は、初戦(2回戦)のフィリピン選手にストレートで快勝したものの、3回戦で北京五輪2位のロブシャン・バイラモフ(アゼルバイジャン)に1-2で敗れ、五輪出場枠がかかった敗者復活戦2回戦では、ハンガリーのピーター・モドスにラスト10秒からのリフト技を決められてしまい、フルピリオドで敗れた。これで、五輪出場枠の獲得はならず、さらに3度目の世界選手権でも思い通りの結果を残すことはできなかった。

 世界V5のハミド・スーリヤンは不出場の状況で、昨年負けたロマン・アモヤン(アルメニア)や、強豪のベッカン・マンキエフ(ロシア)は反対ブロック。7番の抽選番号をひき、「ラッキーセブンだ!」と気合を入れた計量の時点では、長谷川に追い風が吹いているようだった。
 
 しかし、五輪出場は一筋縄ではいかなかった。初戦の2回戦から敗者復活2回戦までの計4試合、得意の胴タックルを決められず、要の試合のスタンドでテクニカルポイントを取ることができなかった。さらに、敗者復活1回戦のブルガリア戦では、前歯を折るアクシデントに見舞われてしまった。「言い訳にしたくない」と、五輪出場権をかけたモドス戦での影響を否定したが、口は真っ赤に切れてダメージがあったはず。

ラスト10秒で分けた明暗

 モドス戦では、守れば勝ちとい場面で、一番練習を積んだグラウンドで相手のリフト技をしのぐことはできなかった。「指を持って防御していたけど、最後の詰めが甘かった。世界ではそういうことがよくある」と、1度目のリフト技をしのいだ直後、2度目のリフト技で体が浮いてしまったことを悔やんだ。
 
 世界一と五輪代表枠、両方を狙っていた長谷川だが、世界一の夢が断たれたバイラモフ戦と五輪切符を逃したモドス戦を「どっちも(同じように悔しい)です」とうつむいた。「レスリングはメダルを取らなくてはならないと思うし、その責任が自分にはあった。それが果たせませんでした」と、世界大会で自分の役目を果たせなかったことを悔やんだ。
 
 3度目の世界で、またも壁にはね返された長谷川。「これが今自分の現状。オリンピックまで1年弱あるので、なんとか出場権を取りたい」と言葉を振り絞り、代表としての決意を見せた。金メダル、五輪出場-。ともに今回叶わなかったが、練習時間と同じように多大な時間を割いてきたビデオ研究の効果はあった。「ビデオのとおりだった」と振り返った。
 
 確かに、バイラモフやモドスは強かったが、ピリオドスコアはともに1-2で、ほとんどがピリオド1-0の攻防。本当にきん差で負けたと言える。「結果がすべて」という長谷川にとっては悔しい結果かもしれないが、この試合内容は、長谷川が世界トップと同等に闘っている証拠でもある。次の五輪予選は来年3月のアジア予選の2枠。アジア大会のような、さわやかな長谷川の笑顔が見られるか-。