2012.11.27

【全国中学選抜選手権・特集】全国大会3連覇の強豪を破って涙の初優勝!…男子59kg級・梅林太朗(JOCアカデミー)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)

 6冠を達成させるわけにはいかなかった! 全国中学選抜選手権の男子59kg級は、昨年2位の梅林太朗(JOCエリートアカデミー=右写真)が決勝で成國大志(ゴールドキッズ)を2-1で下して初優勝。成國の3年連続二冠(計6冠王)を阻止する金星を挙げた。

 全国少年少女選手権を5度優勝し、鳴り物入りで昨年4月、同アカデミーに入校。昨年のこの大会で1年生ながら準優勝の成績を収めた。しかし梅林にとっては悔しさだけが残ってしまった。「(今大会は)最後まで気を抜かずに、自分のレスリングをしようと思いました」。

 昨年乗り越えられなかった決勝の舞台で対峙したのは、今年6月に史上5人目の全国中学生選手権3連覇を達成し、この大会も2連覇中で“中学六冠”がかかった成國大志だった。梅林は2年生で、成国は3年生。1歳上の“タイトルホルダー”を相手に、梅林は「絶対に勝てるとは思わなかったけど、決勝まで行ったら、あとは気持ちなのでやるしかないと思った」と覚悟を決めた。

決勝戦、第2ピリオドから粘った梅林(赤)

■66kg級の体に成長したが、負けたままでの階級アップを拒否

 成國との対決は回避できるはずだった。梅林は昨年から59kg級で闘っていたが、減量が5kg以上になったため、9月の関東中学大会を最後に今大会から66kg級に階級を上げる予定だった。だが、最後と思って臨んだ59kg級の試合で結果を残せず、「負けたままで階級を上げるわけにはいかない」と、急きょ今大会も59kg級にエントリーした。

 そのため、きつい減量に耐えなければならなかった。「関東大会で体重を落としてから、ずっと節制してきた」と、優勝の2文字のためにすべてをかけてきた。

 第1ピリオドの立ち上がりは、成國にあっさりとバックポイントで1点を取られた。梅林は「もう、ダメだと思った」と弱気になってしまったが、そんな梅林を救ったのがセコンドの江藤正基コーチだった。「セコンドの江藤コーチが攻めろって言ってくれて…。『(階級を上げてきた成國より)体が大きいんだから、圧力をかけて前に前に出ろ!』と言われた」。

 信頼するコーチの一言で強気を取り戻した梅林は、第2ピリオドからエンジン全開。序盤に0-2と追い込まれるも、中盤に返し技からの攻撃で3点を奪って逆転。第3ピリオドも梅林が序盤に1点を奪ってリード。追いかける成國が焦って打ったがぶり返しを冷静につぶし4-0。ピリオドスコア2-1で全国大会3連覇の王者を破って優勝を決めた。

■6月の全国中学生選手権で屈辱の負傷棄権負け

第3ピリオドまでもつれた末、梅林(赤)が激戦を制した

 キッズ時代からエリート街道を走ってきた梅林だが、今年は挫折も味わった。6月の全国中学生選手権では決勝で通称“水車落とし”を受けてしまい、頭からマットへ。救急車で運ばれて負傷棄権負けで2位。頭部を強打したことで、1カ月の休養を余儀なくされた。

 この話になると、「ずっと悔しくて…」と目頭をぬぐいながら声を絞り出した梅林。そんな思いからか「やっぱり成國選手に六冠をとらせるわけにはいかなかった」と振り返った。

 この日は成國戦以外にも苦しい闘いばかりで、「残り20秒まで負けていた試合もあった。(優勝は)気持ちで取ったのかな」と振り返る。紆余曲折を経てつかんだ栄光に最後は安堵の表情を浮かべ、来年こそ中学2冠王者を目指すと宣言した。