※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)
全国中学選抜選手権の男子53kg級は、全国中学生選手権(全中)47kg級優勝の吉村拓海(埼玉・埼玉栄)が、決勝で永田丈治(青森・八戸ジュニア)を2-0で下して初優勝。73名がエントリーした今大会最大の“激戦区”を制すとともに中学二冠を達成し、最優秀選手にも選ばれた。(右写真)
最優秀選手賞のコールは所属の「埼玉栄の~」と始まった。吉村は「(74kg級で優勝し、同じく中学二冠を達成した)山崎弥十朗のことかと思った」が、自分の名が呼ばれてびっくりした様子。うれしそうにカップを手に写真撮影に収まった。
■挑戦を目的に1階級アップ
今大会の階級アップは、入念に計画したうえでの決断だった。「体の成長もあるけど、一番は、47kg級でチャンピオンになったし新しい階級でやってみたかったから。(6月の)全中が終わってすぐに体作りをはじめました」と、5ヶ月計画で準備してきた。
男子47kg級も67名がエントリーした激戦階級だが、それよりも多い階級に挑戦するとなると、1日の試合数が増える場合もある。記録や結果にこだわって階級を調整する選手もいる中で、吉村は「試合は大好きだから」と、53kg級への階級アップに何の障害も感じなかった。
決勝で闘う吉村
決勝の永田戦では、第1ピリオドは終盤まで0-0だったが、残り5秒で飛び込んだタックルが決まり、1-0でものにすると、第2ピリオドは相手の力を利用したカウンター攻撃も決まった。「返しだけで終わりたくない」と、終盤にはダメ押しのアンクルホールドもさく裂。「ローリングは何度も防御されていたので、とっさにアンクルに切り替えた」と試合展開も満点だった。
■成國大志の6冠獲得を阻止した梅林に感謝
男子のMVPは、59kg級に出場した成国大志(東京・ゴールドキッズ)に中学6冠王がかかっていて優勝すれば受賞が有力視されていた。成国は決勝で梅林太朗(JOCアカデミー)に敗れて2位に終わり、受賞の対象外へ。「MVPは梅林選手のおかげです」と、感謝の気持ちも忘れなかった。
埼玉栄高に進学してもレスリングは続ける。最近は高校1年生でインターハイなど全国大会で活躍する選手が増えている。「僕もいい試合をして、1年生チャンピオンになりたいです」と目を輝かせていた。