※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫)
今年の全日本大学選手権は、西日本の大学から3選手が決勝に残った。いずれも敗れて優勝はならなかったが、西日本の躍進を示す結果に。西日本から3選手が2位以上に入ったのは、8階級だった1998年に「優勝1人、2位3人」だった時以来。3選手のうち、中京学院大から60kg級の財津拓弥(右写真)と120kg級の大石亮の2人が入り、来月の西日本学生秋季リーグ戦(12月8~9日、大阪・堺市金岡公園体育館)での悲願の初優勝へ向けて勢いをつけた。
60kg級で2位となった財津は、熊本・玉名工高時代にはインターハイでベスト8が最高。昨年の西日本学生選手権で優勝したものの、「全国の大会で表彰を受けたことがありません。組み合わせもよかったと思いますが、銀メダルであっても、とにかくうれしいです」と、初の全国大会の表彰台を喜んだ。
■西日本インカレでの黒星が発奮材料
「組み合わせに恵まれた」とは言うものの、同じブロックには日体大の代表もいれば、西日本で競い合っていた角谷侑亮(立命館大)、先月の西日本学生選手権で敗れた有元伸悟(近大)もいた。神風が吹いたような組み合わせではなかった。
お互いに勝ち上がれば2試合目で当たるはずだった谷田旭(日体大)が初戦で敗れて対戦がなくなり、準決勝で対戦予定だった角谷か有元もその前に敗れる運のよさ。いや、谷田を破った選手と、角谷と有元を破った選手に勝っての決勝進出だから、「運の良さ」というのは当たっていまい。実力で勝ち上がった決勝だった。
善戦空しく決勝で敗れたが、全力を尽くした財津
■12月、選手生活のすべてをかけた闘いへ
現在4年生。卒業後は地元の企業への就職が決まっていて本格的なレスリング活動からは引退するので、鴨居へのリベンジの機会は12月の全日本選手権だけとなる。「闘うことになれば、今度こそ勝てるよう、今回と同じく攻めるレスリングで闘います」と言う。
その前に西日本学生秋季リーグ戦がある。熊本から九州や大阪を飛び越えて岐阜の大学へ進んだのは、同大学の若山真毅コーチが熊本まで何度も足を運んで声をかけてくれたことが大きい。西日本学生の王者のみならず、今大会で殊勲の2位に入賞し、個人では最低限度の恩を返せた。あとは、同大学がまだ達成していないリーグ戦優勝のプレゼントだ。
今年のメンバーは、120kg級で2位に入った大石のほか、55kg級には西日本インカレ4連覇を達成した桑木黎もいて戦力は厚い。この大会の大学対抗得点も西日本で最高の21点をマークして6位に入賞し、勢いをつけた。「絶対に優勝します。それだけのメンバーです」ときっぱり。12月、選手生活のすべてをかけた闘いに挑む。