※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
昨年の大会、最後で優勝を決め高谷惣亮主将を胴上げする拓大選手
山梨学院大、国士舘大、専大からも優勝者が生まれそうな階級がある。そうなると、団体優勝チームの得点が下がることが予想される。7階級制になった2002年から昨年までの10年間で、最も低い得点で優勝したのが2009年の拓大で、「42点」(1階級優勝)。今回はこの得点を下回る数字での優勝も考えられるほど、各大学の戦力が接近している。昨年同様、最終日の最後の試合まで優勝が確定しないこともありうる熱戦が予想される。
大学対抗得点は、各階級の優勝選手に12点、2位に9点、3位に6点…が与えられる(8位1点まで)。1位と2位に3点差、1位と3位に6点差が出てくるので、試合前日に行われる組み合わせも大きく作用してくる。また、これまでの例では、「0点」の階級があるチームが優勝するのはかなり厳しい。途中で負けても、敗者復活戦の道ができたら落ち込むことなく闘い、1位でも上位を狙う精神力を持つ選手のいるチームに勝利の女神がほほ笑みそうだ。
■4階級制覇で4年連続6度目の優勝を目指す拓大
拓大は、60・84・96・120kg級の4階級で優勝の可能性を秘める。初日に60kg級を制するなどして25点を超える得点をマークしておけば、最終日の重量3階級がどう低く見積もっても24点(12点×1、6点×2)は稼いでくれると思うので、優勝を近づけたと考えていいのではないか。
初日に15点程度だった場合は、最終日の重量3階級が奮起して優勝を独占すれば得点は51点となり、優勝に手が届く。確実に優勝するためには、初日に25点は超えておきたい。
東日本学生リーグ戦優勝の日体大。今季2冠目を目指す
敗者復活戦のある今回のルール下では、74・84・96kg級で、途中で負けることはあっても3位には入れる実力者がそろう。軽量3階級で30点(12点×2、6点×1)だとし、その後の3階級すべてで3位入賞を果たせば18点(6点×3)が加わり、総得点が48点となって優勝圏内。ただ、優勝をものにするには、軽量3階級で全勝としておきたい。
■昨年逃した初優勝を目指す早大
早大と日大は、全日本学生選手権のフリースタイルでは優勝なしに終わったが、ともに実力を出し切れば優勝できる選手がそろう。早大は66・74・96・120kg級で優勝を狙える。初日の66・74kg級で勝つなどして得点を30点(12点×2、6点×1)にしておけば、最終日の重量3階級で18点以上の上積みが期待され、昨年、目前で達成できなかった初優勝がやってくる。
日大は60kg級のほか最終日の96・120kg級で優勝が見込め、84kg級も3位以上は計算できる。重量級を奮起させるためには軽量級が踏ん張らねばならない。60kg級を制するなど初日の4階級で25点をマークしておき、最終日に30点(12点×2、6点×1)を加えることができれば、7年ぶりの優勝が転がりこんでくる。
山梨学院大、国士舘大、専大はキャスチングボード(絶対的な勢力のいない状況下で、勝敗を決定する第三者的な立場の少数勢力)で終わってはなるまい。山梨学院大と国士舘大は2階級制覇も不可能ではない。他の階級でもまんべんなく得点を重ねれば40点には届くこともありえ、優勝争いに加わることができる。強豪大学を引きずり下ろして優勝得点を下げることで、自らの優勝の目も出てくる。
各階級の展望は下記の通り。
(予想=樋口郁夫)
【55kg級】
全日本学生選手権優勝の森下史崇(日体大)と同2位で国体優勝の高橋侑希(山梨学院大)の争いか。国体での両者の対戦はなかった。高橋は森下を破っての優勝がほしいところ。昨年優勝の半田守(専大)は全日本学生選手権では高橋にきん差で敗れた。リベンジせねばなるまい。
2010年全日本学生選手権2位の矢後匡平(日大)、昨年、1年生ながら3位に入賞した西山凌代(拓大)、同じく昨年3位で今年10月の西日本学生選手権で4連覇を達成した桑木黎(中京学院大)も上位を狙う実力を持つ。
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【60kg級】
昨年優勝で今年の全日本選抜選手権優勝の池田智(日大)が優勝候補と考えられるが、今夏、病気のために戦列を離れた。どの程度回復しているか。昨年の大会で敗れた一昨年優勝の鈴木康寛(拓大)がリベンジを狙い、2年ぶりの優勝を目指す。
日体大は、全日本学生選手権優勝の五十嵐琢磨と、ロンドン五輪の練習パートナーに抜てきされた谷田旭のどちらが出てきても優勝候補。全日本学生選手権3位の鴨居正和(山梨学院大)が優勝争いに加わるか。
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【66kg級】
日体大から昨年優勝の井上貴尋と全日本選抜選手権3位の小石原拓馬のどちらが出てくるか。どちらが出てきても優勝争いに加わる力は十分。全日本学生選手権の王者(砂川航祐)がエントリーもできない層の厚さを見せなければなるまい。
全日本学生選手権は不調だったが、田中幸太郎(早大)が全日本選抜王者の意地を見せたいところ。
全日本学生選手権で小石原と井上の日体大3選手を破って2位になった安達達也(国士舘大)、同3位の岩渕尚紀(拓大)らが優勝戦線に加わる可能性もあり、だれが優勝してもおかしくない。
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【74kg級】
全日本学生選手権優勝の島田大育(国士舘大)と同2位の北村公平(早大)の争いが再現されるか。北村は全日本大学グレコローマン選手権で優勝して学生初タイトルを獲得。本領を発揮し始めた。再び熱い闘いが展開されそう。
昨年3位の長谷川公俊(神奈川大)、全日本学生選手権3位で西日本学生選手権優勝の亀井竜昇(日本文理大)らがどこまで食い込むか。
日体大からは全日本学生選手権ベスト8の杉本京介が正エントリー。北村に惜敗しての結果であり、北村に迫る実力はある。全日本学生選手権のグレコローマンで優勝した小森大祐(拓大)がどこまでやるか。
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【84kg級】
全日本学生選手権優勝の赤熊猶弥(拓大)を追う一番手は、同3位の鈴木友希(山梨学院大)と細谷翔太郎(日大)=同2位は96kg級へ出場。赤熊は全日本学生選手権で6試合を総スコア40-3で快勝しており、一歩リードしているか。
74kg級で全日本選抜選手権と全日本学生選手権で3位に入っている葈澤謙(国士舘大)が、1階級上でも優勝戦線をにぎわしたいところ。松本岬(日体大)は全日本学生選手権でこそ上位入賞ならなかったが、レギュラーとして東日本学生リーグ戦優勝を支えており、あなどれない実力を持つ。優勝争いに加わるか。
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【96kg級】
全日本学生選手権優勝の木下駿(拓大)、同2位の大坂昂(早大)、同3位で全日本選抜選手権を制している山本康稀(日大)の三者の争いか。木下は全日本大学グレコローマン選手権で優勝、大坂は全日本学生選手権のグレコローマンで優勝、山本は国体2位など、それぞれ成績を残しており、熱戦が期待される。
昨年84kg級で優勝した佐々木健吾(日体大)がこの階級にエントリーした。1階級上でも実力を発揮できるか。全日本選抜選手権3位の安田翔(国士舘大)、全日本学生選手権84kg級2位の亀山晃寛(山梨学院大)らに上位を狙う実力がある。
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【120kg級】
4選手が競う。全日本学生選手権両スタイル優勝の金沢勝利(山梨学院大)、昨年優勝の村木孝太郎(拓大)、全日本大学グレコローマン選手権で初の学生タイトルを獲得した前川勝利(早大)、全日本選抜選手権優勝で全日本学生選手権2位の岡倫之(日大)で、だれが優勝してもおかしくない状況。
全日本学生選手権3位の角田友紀(東農大)、同96kg級3位の田中哲矢(大東大)、JOC杯優勝の村上佳児(徳山大)らが前記選手の1人でも食うことができるか。