※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
来年のパリ・オリンピックの金メダル有力候補の一人、藤波朱理(日体大)への期待で燃えている三重・いなべ市。その波及効果か、早くも藤波に続く選手が出現。同市のレスリング熱がいっそう高まりそうな可能性が出てきた。
2023年東京都知事杯全国中学選抜U15選手権の女子で、最多のエントリーとなる29選手が参加した54kg級は、昨年の50kg級の覇者・小塚菜々(三重・INABEレスリングアカデミー)が5試合を勝ち抜いて優勝。今年は国内外の大会ですべて優勝する強さを見せた。
小塚は「階級を上げてのチャレンジ。挑戦者の気持ちで闘いました」と振り返る。しかし、「パワーもついてきたし、自信はありました」ときっぱり。10月の全日本女子オープン選手権から階級を上げ、その大会で全国中学生選手権54kg級優勝の小川璃苑(岐阜・中津川ジュニア)を破って優勝していた。確固たる裏付けのある自信だった。
小川はU15アジア選手権(ヨルダン)のチャンピオンであり(小塚は50kg級のチャンピオン)、意地がある。この大会は準決勝で対戦し、小塚が4-0とリードしながら、第2ピリオド中盤に巻き投げの失敗に端を発して2失点。終了間際の小川の猛攻に防戦を強いられるなど、危ない試合だった。
「欲を出してしまって(ポイントを取られた)…。悔しいです」。この2年間、国内では負け知らず。階級を上げても勝ち続けるためには、1点といえども失う試合はしたくない。反省すべき試合だったが、その思いを決勝で全国中学生選手権54kg級2位の湯田鈴(福島・ふたば未来学園中)戦にぶつけ、10-0のテクニカルスペリオリティ勝ち。最後をしっかりと締めた。
藤波の父がグレコローマンの強豪選手だったことと対照的に、小塚の両親はレスリングをやっていたわけではない。しかし、父がレスリングに興味があったそうで、兄がレスリング教室に通い始め、つられて通い始めた。気乗りのしない時期もあったが、小学校3年生のとき(2017年)、ジュニアクイーンズカップ・キッズの部と全国少年少女選手権で優勝。「自信がついて」と、本気に打ち込み始めたと言う。
コロナのため大会出場ができないときをはさみ、昨年と今年は国内大会で全勝をマーク。藤波という目標が身近にいて、後を追いたいという気持ちになり、ときに技を教えてもらったりしたことで急速に力を伸ばした。地元は“朱理フィーバー”に沸いており、そのエネルギーをもらって、さらに実力を伸ばしていくことが期待される。
昨年のU15アジア選手権(バーレーン=46kg級)では、躍進するインド選手に黒星を喫し、初の国際大会は痛恨の大会となった。しかし、今年のU15アジア選手権(前述=50kg級)では、選手は違ったがインド選手に圧勝。嫌な思いを払拭し、来年はU17世界選手権(アルゼンチン)の制覇を目標に掲げる。すでに、今年2月の「クリッパン女子国際大会」(スウェーデン)のU17で優勝し、「自信はあります」と言い切った。
「朱理二世を目指す?」との問いに、「(そう言われると)少しプレッシャーになりますけど、頑張りたいです」と答え、藤波の後ろ姿を追うことを誓った。