※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
愛媛県レスリング協会事務局長 越智雅史
(写真は越智事務局長提供)
11月10日(金)〜12日(日)の3日間、愛媛県内で「ジュニアアスリート国際交流事業」が開催されました。
今回、愛媛県に講師として招へいされたのは、男子グレコローマン77kg級で2021年東京オリンピック銀メダル、2022・23年世界選手権を制したキルギスの現役の世界王者・アクジョル・マフムドフ選手(関連記事)。また、2004年アテネ・オリンピックからキルギスのナショナルコーチを務め、東京オリンピックにはレフェリーとして参加したメランベ・アメトフ・コーチも来日しました。
2人は11月8日(水)にキルギス・ビシュケクからカザフスタン・アルマトイ、韓国・仁川を経由し関空へ到着。11月9日(木)に愛媛入りし、10日には愛媛県庁へ表敬訪問を行いました。
練習は11月10日(金)午後から今治工業高校の武道場で行われました。県内の中高生や、愛媛県出身で2023年世界選手権・男子グレコローマン67kg級代表の曽我部京太郎(今治西高卒~現日体大)、今年の全日本学生選手権67k級王者の長野壮志(八幡浜工業高卒~現九州共立大)、鹿児島国体成年グレコローマン67kg級3位の渡部泰世(今治工業高卒~現専大)、2021年世界選手権・女子68kg級銀メダリストの宮道りん(今治工業高~日体大卒~現一宮運輸)らが集まり、技術指導、スパーリング等で汗を流しました。
通訳として、国際審判の小池邦徳氏(日本オリンピック委員会/天理大教)に帯同していただきました。
練習はウォーミングアップからマフムドフ選手の主導で行われました。マット運動については、日本で行われているそれと変わりはありませんでしたが、打ち込みでは、本数は少ないものの、スパーリングさながらの激しくポイントを取り合う姿が見られました。スパーリングについても、打ち込み同様実施本数は少なく、スパーリング終了後の技術の反復練習に時間を費やしているような印象を受けました。
この日の最後には、沖山功・日本協会審判委員長も香川県から駆けつけてくださり、今回のこの国際交流事業がいろいろな方々の縁がつながり実現できていることを実感しました。
11月11日(土)の練習からは、愛媛県出身のオリンピアンでもある松本慎吾・日体大監督も合流しました。
午前中は、アメトフ・コーチからグレコローマンのスタンド技術指導をしていただきました。アメトフ・コーチは、ジュニア世代からの強化にも関わっており、とてもていねいで分かりやすい技術指導をしていただきました。特に「コンビネーション」と何度も説明しており、「日本の選手は、体力はあるが技が乏しい」と評され、グレコローマンの技術はジュニアの若い世代から修得することが必要とのことでした。
キルギスでは、12月から本格的な強化スケジュールに入るそうです。今の時期の練習は、マットに上がるのは週に2日程度であり、他の日は、一日中フィジカルトレーニングの日や、トレイルランニング、水泳、球技を導入しているとのことでした。
日本の練習が、毎日マットでスパーリングをしていたり、グレコローマンに本格的に取り組み始めるのが大学入学後ということを知り、とても驚かれていました。
午後は、愛媛県武道館に移動し、県内から「えひめ愛顔のジュニアアスリート」たちとレスリング体験プログラムをして交流しました。マフムドフ選手はレスリングを数回しか体験したことのない「えひめ愛顔のジュニアアスリート」たちを相手に、ウォーミングアップ、ジムゲーム、レスリング体験を指導しました。
最後に子どもたちから「何か気をつけていることはありますか?」などとの質問に、マフムドフ選手からは、「体にいいものしか食べない」や「君たちの取り組む姿勢や、規律を守る姿がすばらしい」と回答。さらに、「ここまで身体能力を高く育ててこられた保護者の方々に尊敬と感謝をいたします。」と話されたのが印象的でした。
練習最後の11月12日(日)は、北条高校で練習を行い、アメトフ・コーチからスタンドからの投げ技やグランドでの攻防を数多く指導していただきました。
この日もコーチから「コンビネーション!」と数多く声をかけていただきました。グレコローマンだけでなく、女子にも熱心に技術指導していただきました。練習に参加したどの選手にも熱心に取り組む姿が見受けられました。
一方のマフムドフ選手は、曽我部選手と意気投合し、打ち込み、スパーリング、技術の確認を最後まで行っていました。スパーリングでは、マフムドフVS松本慎吾監督の対決も見られました。参加した選手たちは、雰囲気に飲まれるかのように2人のスパーリングに見入っていました。
練習の最後には、アメトフ・コーチから今回の練習会の講評をしていただき、MVP選手として今治の中学生にキルギス代表選手が履いているレスリングシューズをプレゼントしていただきました。マフムドフ選手からのお礼の言葉に、通訳の小池氏も思わず涙ぐむような場面も見受けられました。