※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫)
優勝を決め、ガッツポーズの鈴木
「うれしい。インカレで負けていたのでリベンジを狙っていました。その時は返し技で負けてしまったので、そのデフェンスをしっかりやりました」と、前回の負けをばねにしての優勝を強調。第1ピリオドのグラウンド攻撃を取って、第2ピリオドのグラウンドの防御を守り切るという理想の展開での勝利だが、「いえ、(ローリングの返し方が)まだまだです」と謙そんした。
インカレで負けてから、この日のリベンジを目指して練習に打ち込んできた。インカレで負けたのは、返し技にかかったこともさることながら、「気持ちが弱いので、びびってしまっていたんです」とのこと。この克服にも力を注ぎ、充実した練習をこなしてきたと振り返る。
■卒業後は、小学校からの夢だった総合格闘技の世界へ
青森・八戸市の出身。同市は今夏のロンドン五輪で金メダルを取った小原日登美選手(自衛隊)と伊調馨選手の出身地であり、一躍“レスリングの町”となった。小原選手は母校(八戸工大一高)の卒業生。「オリンピックを見て刺激になり、励みになりました」と、小原&伊調効果も勝因のひとつとして挙げた。
第2ピリオド、横沢のローリングを必死に守った(赤が鈴木)
現在の総合格闘技の現状は、国内で一世を風びした「PRIDE」「DREAM」といったビッグイベントが消滅し、冬の時代を迎えている。存続が厳しい状況となっているが、「子供の頃からの夢ですから」と、気持ちに揺れはない。
「二兎を追うものは一兎をも得ず」のことわざを守ったのだろう、総合格闘家を目指してはいたが、これまで総合の練習はまったくやっておらず、レスリングに専念してきたという。そのおかげで「大学王者」の勲章を手にした。その努力を忘れなければ、総合の世界でも飛躍できる可能性は十分にあるはず。
逸材がレスリング界を去るのは残念だが、夢を追う若者の挑戦をレリング界はあたたかく見守ることだろう。あと2大会、レスリング生活のすべてをかけて燃えることが望まれる。