※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫)
決勝の第1ピリオド、ローリングを決めた音泉
音泉は「全日本選抜と国体を取っているので、学生のタイトルを落とすわけにはいかなかった」とホッとした表情。「プレッシャーがありましたね」と言いながらも、「自信の方が大きかったのでは?」との問いに、「そうですね」とにっこり。
8月の全日本学生選手権でも無失点で優勝している。学生間で揺るぎない実力を築き、ワンランクアップ目指す位置にたどり着いたのは間違いない。
■五輪代表選手との練習で実力アップ
香川・多度津高時代の2008年に全国高校選抜大会優勝の実績を持つが、やりたかったのはグレコローマン。こちらの方は全国高校生グレコローマン選手権と国体の3位が最高だった。得意なグレコローマンに専念したくて日体大へ進み、1年生の東日本学生春季新人選手権優勝と、順調な大学生活をスタートした。
その後、チーム事情で試合出場の機会を奪われたが、復帰後、ブランクをものともせずに2年生(2010年)の秋季新人選手権74kg級2位と実力をキープ。昨年の全日本学生選手権では優勝候補に挙げられるまでに成長した。今年に入ってさらに飛躍したわけだが、その要因は「オリンピック選手との練習だった」と振り返る。
日体大の練習には、自分より軽い階級だが長谷川恒平(55kg級)、松本隆太郎(60kg級)という五輪代表選手になった選手が参加している。74kg級で世界5位の実力を持つ金久保武大もいて、上下の階級で世界トップレベルの選手がそろっている。
6月の全日本選抜選手権で優勝した時の音泉(左)。12月にもこのシーンが見られるか?
■高校時代の屈辱の相手にリベンジ!
6月の全日本選抜選手権の決勝で、大学の1年先輩であり、昨年の大学王者の富塚拓也を破って優勝したことが、飛躍のきっかけだったようだ。最後はそり投げを決めてフォール勝ちした試合だが、「常に攻めるスタイルが貫けました」と振り返る。
高校時代にグレコローマンで全国制覇を阻まれたのが、2度ともこの日の決勝の相手、1学年下の花山和寛(早大=当時愛媛・八幡浜工)だった。「少し意識しました」とのことだが、この勝利で過去を一掃といったところ。卒業後もレスリングに打ち込める環境を求めており、「1年1年をしっかりやっていきたい。リオデジャネイロが見えてきました」と話し、12月の全日本選手権での優勝を誓った。