※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=池田安佑美、撮影=保高幸子)
昨年王者を破り、大学1年生で国体王者となった高橋
大学1年で成年の部を制した選手は、昨年2011年山口国体グレコローマン120kg級で優勝した前川勝利(早大)がいるが、フリースタイルに限れば2005年フリースタイル60kg級の大澤茂樹(当時山梨学院大=現総合格闘家)以来7年ぶりの快挙だ。
■昨年王者を破っての優勝
決勝は、昨年地元優勝を飾った守田泰弘(山口・アールシースタッフ)を2-0下して優勝を決めた。高橋は、「大学に入ってずっと2位ばかり。優勝に届かなくてもどかしい毎日でしたので、国体で優勝できて、初優勝したような気分です」と喜びをあらわに。
高速タックルからの連続技が代名詞だった高橋だが、敵なしだった高校を卒業して、大学では先輩たちと対戦する日々。さすがに毎回快勝というわけにはいかなかった。8月の全日本学生選手権では、攻めよりもカウンター攻撃に頼る一面も。
国体優勝とビッグタイトルを手に入れたが、高田裕司監督には「得点力がないと、このあとも勝てないぞ」と注文をつけられた。高橋は、攻め手を欠いたところは反省点として真摯に受け止めている。だが、準決勝では、2度も相手ボールのクリンチを切ってポイントにつなげるなど逆境を乗り越え、決勝戦の第2ピリオドの決勝点は、自ら切り込んだタックルで勝負を決めるなど、高橋らしさも見せた。
■次のビッグタイトルは大学王者? それとも全日本王者?
久々にセコンドで雄姿を見届けた高校時代の恩師、藤波俊一・いなべ総合高監督も「勝つには勝ったけど、もっと攻めなくてはいけない。タックルも決勝の1回だけで、クリンチも多かった」とダメ出ししたが、「足を触らせてからもエスケープしてバックを奪うなどパワーがついた。これなら世界でも勝てる」と、手元を巣立ってわずかの期間に成長した点も見逃さなかった。
決勝で闘う高橋(青)
シニア初制覇を達成した高橋が狙う次のビッグタイトルは、11月の全日本大学選手権と12月の全日本選手権。高校1年から出場している全日本選手権は今年で4回目と経験は十分にある。男子フリースタイル55kg級でロンドン五輪銅メダルの湯元進一(自衛隊)と2010年世界選手権3位の稲葉泰弘(警視庁)は現役続行を表明している。「(次の五輪に出場するためにも)先輩たちを倒して出場したい」ときっぱり。
ロンドン五輪では10代のチャンピオンも生まれた(男子フリースタイル60kg級優勝のトグルル・アスガロフ=アゼルバイジャン)。「自分も」と高橋侑希が本格的に天下取りを目指す。