※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=池田安佑美)
「ぎふ清流国体」の少年グレコローマンでは沖縄県勢が大活躍。84kg級の与那覇竜太、66kg級の屋比久翔平、96kg級の宮國雄太の浦添工トリオがいずれも優勝と強さを見せた(右写真)。与那覇は3月の全国高校選抜大会、8月のインターハイ、今回と三冠王を達成。8月に行われた全国高校生グレコローマン選手権を含めると2年連続四冠王へ。両スタイルで不動の王者となった。
■2010年沖縄インターハイの総決算
沖縄の強さの秘密は、2年前の2010年沖縄インターハイに向けた強化プランの賜物だ。9年前に屋比久保監督が当時小学生だった与那覇らを育て始めた。インターハイをにらんでの強化指定選手は、与那覇たちが最終学年。屋比久監督の夢は今回の「ぎふ清流国体」で一区切り。同監督は「以前は沖縄と対戦が決まると、『ラッキー』と言われていた。それが今では敬遠されるほどになった。強化の成果が出て満足しています」と集大成を心から喜んでいた。
今年3月の全国高校選抜大会では沖縄県勢初の学校対抗戦優勝を達成。春夏連覇も狙ったが、インターハイでは故障者が出たのが響き、優勝を逃した。「6人で闘うんだよとチームに言い聞かせていたけど、ボールチョイスも全部霞ヶ浦に出るなど運もなかった」と、準々決勝で敗退。個人戦も優勝は与那覇のみで、屋比久は2位、宮國は3位とタイトルに届かなかった。
苦しみながらも四冠王を達成した与那覇
このままでは国体に影響が出ると感じた屋比久監督は、すぐさま行動に移す。日本のグレコローマンの中重量級を支え、クロスボディロックからの攻撃に定評がある鶴巻宰(自衛隊)選手を招待し、グレコローマンに特化した練習を積ませた。「クロスボディの切り方、守り方を中心に教わっていました。鶴巻選手が帰った後、本人たちはやり切ったと満足そうでしたし、与那覇の不安も消えていました」。
屋比久監督の構想はズバリと的中。国体ではグレコローマンに出場した全選手が優勝という快挙を達成した。もちろん、教え子が栄えある三冠を達成するのも初めてだ。「集大成を全員が優勝で締められて幸せ」と最後まで笑顔だった。
■三冠王者の与那覇、圧巻の優勝
高校三冠王1番乗りを果たした与那覇は「うれしいです」と即答した。だが、3月の全国高校選抜の学校対抗戦で優勝した時のような涙はなく、ホッとした表情を見せた。今シーズンは主将としてチームをけん引。立場上、弱音を吐けない辛さもあったが、「厳しい練習をしっかりしてきたので、(優勝する)自信はありました」と振り返った。
準決勝で闘う与那覇
フリースタイルでも使えるローリングが与那覇の得意技だったが、鶴巻に「ローリングだけだとあとあと手の内がバレてくる」と教えられ、今後はクロスボディからの攻撃も積極的に取り入れていくようだ。
今回が高校生最後の大会となる。2010年沖縄インターハイの申し子として、小学校、中学校と白星街道を走ってきた与那覇。沖縄インターハイの時は「優勝」の二文字は飾れなかったが、今年3月には悲願の全国優勝を団体もで成し遂げた。優勝インタビューでは思わず男泣き。「うれし泣きはあの時だけ。18年間生きていて一番うれしかった」と与那覇。
卒業後は都内の大学に進学する。「ロンドン五輪を見て感動した。僕も出場したい」とすぐさま次の目標を見出していた。