※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=池田安佑美)
「ぎふ清流国体」の前半戦となったグレコローマンで、地元岐阜は成年男子55kg級の清水早伸(自衛隊=右写真)が、決勝で全日本選抜選手権2位にして学生王者でもある田野倉翔太(東京・日体大)に2-1で競り勝って優勝。第2日の主役に躍り出て多くの方に祝福を受けた。「優勝した瞬間は応援してくれたみなさんのおかげだと思った」と、地元の応援団からの清水コールが清水の背中を押してくれたようだ。
決勝戦は成年、少年ともに軽量級から開始した。成年の決勝第1試合から会場は、大いに盛り上がった。それは地元出身の清水早伸(自衛隊)がマットに上がったからだ。
■地元開催を味方にして壁を突破
清水は岐阜県の岐南工高を卒業すると、半年間にわたる新人自衛官の集合教育を経て体育学校レスリング班に加わった。いわゆる“たたきあげ”で、そこから成長し、近年は全日本レベルの大会で表彰台に立つほど実力をつけてきた。
「でも3位ばっかりなんです」と、国内の主要大会はブロンズメダルばかり。どうしても準決勝の壁が破れなかった。ロンドン五輪までの同階級は、同五輪に出場した長谷川恒平(福一漁業)と国体王者の峯村亮(神奈川大職)の2強時代が続いていた。昨年の全日本選抜選手権では、2回戦で田野倉が峯村を破る殊勲を挙げると、清水も負けじと12月の全日本選手権で峯村を2回戦で下し、2大勢力に迫ろうとしていた。
しかし、全日本選手権、今年の全日本選抜選手権はともに3位と“定位置”だった。今大会、清水は地元開催を味方につけて、ついに鬼門の準決勝を突破する。同門の禎卓也(自衛隊)との対決は2-0(1-0,1-0)で勝ち、壁を乗り切った。
■若手のホープを破り、次の目標は全日本チャンピオン!
決勝の相手は同級の若手で一番の成長株であり、清水より2歳年下の田野倉だ。大方の予想通り、立ち上がりは田野倉のスタートダッシュにてこずってしまう。田野倉がスタンドから仕掛けで、まさかのフォール体勢へ。清水が「フォールかもしれないと思った」と認めるほど、一瞬両肩はついていた。
負けるかもしれないと弱気になりそうだった気持ちを奮いたたせてくれたのは、地元の声援だった。「応援が岐阜一色になっていて、すごくうれしかった」と、第1ピリオド後のインターバルに会場の熱気を感じた清水は、第2ピリオドから目つきが変わった。
しっかりと構えて、がむしゃらに攻めてくる田野倉の動き封じた。そして残り7秒、「技ではなかった」と言うが、清水が田野倉にプレッシャーをかけてゾーンに追い込むと、田野倉がプレッシャーに耐えられず転倒。そこをすかさずバックからローリングの“ワンツー攻撃”で3点を獲得。田野倉に傾いていた流れが逆に清水に向いてきた。
第3ピリオドは残り40秒で田野倉を場外へ追い出し1点をゲット。最後は田野倉の猛ラッシュをかわし、国体王者に輝いた。
準決勝の壁を超えた清水は、次世代のホープとしてロンドン五輪へパートナーとして同行した田野倉に競り勝ってことによって、これでまた一つ腹がすわった。「12月の全日本選手権を頑張ります。国体の優勝ですごく自信になりました」と話し、国内での戴冠も宣言していた。