※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
父・吉田栄勝コーチの話「優勝した時は、うれしいというよりホッとした気持ちでした。世界選手権に出ると聞いた時、『出るからには勝たなければならないよ』と伝えた。いろんな行事があって練習不足だったみたいだけど、オリンピックからの期間が短く、そう簡単に体力は落ちないだろうという気持ちもあった。
ボクらの世代の人間からすれば、カレリンというのは偉大な人です。『カレリンを超えた』と言われてもい、まだそんな気持ちになれないんですよ。確かに13連覇というのはすごいことです。けがもなく出続けてきたわけですから。でも、カレリンは強すぎる選手でしたので、超えたと言っていいのかどうか、というが正直なところです。本当に超えたのかな? オリンピック4連覇すれば、超えたと思えるような気がする。
ここまで続けられたのは、周りの人の応援があったからです。それがないと、選手はなかなか育たないものですよ。(今後は)やると思えばやればいいし、やめると思えばやめればいい。すべて任せます」
母・吉田幸代さんの話「オリンピックに全神経を使ったので、今回はちょっぴり気楽な気持ちで来ました。決勝は緊張しましたけど、負けるという感じはしなかったので、安心して見ていました。来る前、『忙しかったようだけど大丈夫?』というメールを送ったら、『最後の合宿で頑張れたから大丈夫』という返信が来て、大丈夫だな、と思いました。
偉大なカレリンを超えて世界一になってしまいましたね。数年前までは、親も子も全然意識してなかたんです。連勝することより、ひとつひとつ勝っていってくれれば、と思っていたら、こんな記録になりました。(カレリンも達成できなかった五輪V4について)伊調選手も3連覇でしょ。伊調選手は若いから狙えるでしょうけど、どうなんですかね。本人が(目指すかどうか)決めればいいですよ。
このあとも本人の気持ち次第です。休みたければ休めばいいし、やりたければやればいい。お嫁さんに行ってほしいという気持ちが正直なところです」
栄和人監督(至学館大)の話「ウチの大学に来た時、こんな日が来るとは夢にも思わなかった。(ロンドン五輪で勝って)カレリンの記録に並んだ時、もういいんじゃないか、休んだ方がいい、という気持ちがあった。でも、出る以上は勝つ宿命がある。闘う相手も必死になってやってくる。気を引き締めなければならないと思った。
ロンドンの前は、人生でこれほど大変だなことはなかったと思うほど大変だった。それを乗り越えてきた。それが今回に生かされて勝てたと思う。ロンドン金がなければ、この金もなかったでしょう。
きょう勝って、自分の愛弟子に言うことではないかもしれないが、真のチャンピオンだと思った。生活も、人に頼まれたことに嫌な顔をしないでこなしてくれることなどの人間性を含めて、すべてに金メダルをやりたい。本当にいい子だと感じている。少し休みなさい、と言いたいけど…。1年休むと、本当に休んでしまうので、適度に休みながら出ると考えているんじゃないかな
子供に夢を与えるためにも。連覇を14、15と増やしていくことも必要かな。このあと負けても、13連覇の偉業は変わらないのだから、負けてもいいから出ればいい、という考えもある。
恵まれた監督です。小原、伊調、吉田…姉妹もいて、福田会長や高田専務理事など協会の支援にも恵まれて、そんな中でレスリングをやってこれたことに、本当に感謝したい」