※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
試合前日にも報道陣へサービス
計量後の取材を受ける吉田。左端は日本からの報道陣の数に驚いたUSAレスリング協会のゲリー・アボット氏
吉田はあっさりパスし、5時40分には軽食を食べてホッと一息。普通ならこの段階で報道陣の取材を受け、1分でも早く引き揚げるところだが、インドが計量をパスするかどうかで吉田の1回戦の相手が変わる状況。吉田は「(報道の)皆さんは対戦相手が分かってから取材した方がいいんでしょ」と言って、インド選手の結果を待つことに。
モンゴルは、インドが出れば吉田と別ブロック、計量失格すれば同じブロックになってしまう。モンゴルのコーチが、急きょインド選手のコーチをかって出て一緒に動く一幕も。そうした切実な思いが実り、午後6時。インド選手が55kgぴったりで計量をパス。吉田の1回戦の相手がカザフスタンと決まった。
報道陣のために、減量後の疲れた体にもかかわらず20分も待ってくれた吉田の余裕と記者への思いやりに、報道陣一同、感謝感激。
準決勝のウクライナ戦で8年ぶりの3失点
8年ぶりに3点技を受けてしまった吉田(上)。ビデオでは相手の足が出たかどうか微妙だった(下)
しかし、公式ビデオは反対側にあり、相手の足が場外に出たかどうかまでははっきり分からない状況。ルールでは、かかとが浮いていて、つま先だけが場外に出ていれば1失点(かかとがエリア内に接地していれば、場外とはらない)。そういうふうにも見えなくもなかったが、判定は変わらず、チャレンジ失敗の1点が入って0-4となってしまった。
「相手が場外に出たと思った時に、ポーンとやられた。油断ですね。これまでにも、中でレスリングをやればいいのに、(無理に)場外へ押し出しそうとしたこともありました。課題です」と話した吉田は、この屈辱で「火がつきました」。
ロンドン五輪で、小原日登美が決勝戦の第1ピリオドを0-4で落としたことが思い出されたという。「2、3ピリオドにいけば絶対に勝てる」と自分に言い聞かせたという。第1ピリオドは無理をせずに闘争心をセーブしたものの、第2ピリオドに入ると相手のスタミナ切れは明白で、動かしてさらにスタミナを奪い、第3ピリオドにフォール勝ち。地力の違いを見せた。
吉田が3点技を受けたのは、2004年アテネ五輪の準決勝のアンナ・ゴミス(フランス)戦以来、8年ぶりのことだった。