※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
新型コロナウィルス感染防止の制限が徐々に解除され、昨年からレスリングでも数多くの大会が再開されている。
2023年2月11日、東京・新宿スポーツセンターでは、前身の大会を含めれば「日本で最も長い歴史を持つ大会ではないか」と言われている「第34回少年少女選手権/東京新宿ライオンズクラブ旗争奪戦」が開催され、幼児の部から小学校5~6年生の部までのカテゴリーに、1都4県から51クラブ、434選手が集った。
以前は、日本協会の八田一朗・第3代会長が設立した新宿スポーツ会館(2012年9月で閉館)で、ボランティア活動を目的とする国際的な民間団体ライオンズクラブの支援のもと、「毎年2月11日」と決めて行われていた大会。確かな記録が残っていないので定かではないが、新型コロナウィルスのため2年間中止されており、他に大雪で中止された年もあるので、第1回大会は1987年ということになる。
以後、スポーツ会館ジュニアレスリングスクール(現在のSKキッズの前身)の全面協力で大会が続いてきたが、その前からスポーツ会館で、同スクールの尽力によって少年選手の大会として実施されていたもよう。2002年に発行された「日本少年レスリングの歴史と未来」では、1972年12月にスポーツ会館で第1回ジュニアレスリング選手権が開催されたとの記述がある。
少年の全国大会が全日本社会人選手権から分立したのが1979年であるから(連盟発足後の第1回全国少年選手権は1984年=当時は「少年少女」ではなく、「少年」だった)、大会関係者は「日本最長の歴史を持つキッズ大会」との誇りを持っている。
実行委員長として大会を切り盛りしている東京・SKキッズの吉澤昌代表は「やっと開催できた、と感慨深いものがあります」と話す。と言うのも、2021年大会は当初から中止だったが、昨年は5、6年生だけで開催する予定で、エントリーも受け付けたあと、コロナ感染が再び広がって中止を余儀なくされ、無念の思いがあったからだ。
「どの選手も、大会が待ち遠しかったのではないでしょうか。試合に出られることで、生き生きとしていますよ」
選手に目標を与えられるときが来て、本当にうれしそう。会場作りや運営に尽力してくれた東京・日本工業大学駒場中学・高校のレスリング部に感謝の気持ちを表した。
実行委員長の重責をになうのは今大会からとのことだが、実質的には5~6年前から奮闘していた。歴史のある大会の運営を引き受けることに、「私の代で、歴史を途切れさせるわけにはいかないですからね」と、プレッシャーがあったのも事実。今は、大会運営の苦労もさることながら、「次(の実行委員長)を探さないと、やめられないです」と笑うが、この熱狂ぶりに接すれば、継続に尽力しなければなるまい。
キッズ選手の闘いを熱心に観戦していた東京新宿ライオンズクラブの狩野昭会長は「コンタクトしてやるスポーツだけに、コロナ禍ではなかなかできなかったと思う。やっと開催できました」と話し、裏方で頑張っている人の協力があればこそ開催できることに感謝しつつ、「今後も続けてほしい」と期待する。
負けると悔し涙を流す選手の姿を見ることもあり、「これに負けずに頑張ってほしい」と、何度でも立ち上がることを望んだ。
現在は3面マットでの開催。それでも全試合終了が午後6時を回るなど、キッズ・レスリングの隆盛は衰えていない。
全国大会のほか、400人を超える規模の大会では幼児の部をやらないケースも少なくないが(全国少年少女選手権は3年生以上、全国少年少女選抜選手権は4年生以上)、吉澤代表は「幼児~6年生までの大会」というスタンスは崩したくない気持ちを話す。「『幼児の部はありますか?』という問い合わせも少なくないんです」と話し、兄弟や姉妹で、あるいはチームメート全員で同じ大会に出たいという保護者やクラブ代表の気持ちが伝わっているからだ。
その思いを受け止めるため、来年は4面マットでの開催も視野にいれる。その場合、マット運搬の経費や審判員の確保などの課題が出てくるが、「伝統ある大会。キッズ選手の目標となる大会にしていきたい」と話し、日本レスリング発祥の地・新宿区(1931年に早大でスタート)で行われ、日本レスリング界の最大の貢献者である八田一朗会長にルーツを持つ大会を発展させていく思いを話した。