巻頭特別企画 東京オリンピック座談会

48年の時を越え、王国建国の志士が集合
「金メダルを取って本当によかった!」

 日本レスリング界にさん然と輝く1964年東京オリンピックの金メダル5個獲得。オリンピック後、5人だけで集まる機会はなかったという。48年の時を経て、5人の金メダリストが集まり、東京オリンピックを振り返るとともに、日本レスリング界へエールを贈った。


(本文より)

――渡辺君はメチャクチャなところがあったけど、練習量はすごかった。スパーリング(当時1本10分)を1日10本もやっていたよな。

 渡辺 ヘルシンキ・オリンピックで金メダルを取られた石井庄八さんが中大の卒業。軍隊を経験していた人だったので、厳しさが違いましたね。門限破ったら朝まで正座。冬だって容赦してもらえず、頭に雪が積もってもやめさせてもらえなかった。私はけっこう洗礼を受けたのですが(笑)、「勝てばいいんだろ」っていう反発心があり、陰で必死に練習していました。

 ――飲んで帰ってくると、道場の鏡の前で渡辺君が鉄アレイを持って必死に練習していたことがよくあった。夜10時とか、12時近かったんじゃないかな。

 渡辺 石井さんは「3升の酒を飲んだら、3升の汗を流す」という人でしたね。その精神を受け継いで、何をやっても勝てばいいんだろ、と言えるだけの練習はやっていました。

 吉田 大学の上下関係が厳しい時代でした。私が中大に入学しなかったのは、あまりにも厳しい練習と、そうしたイメージが強かったからなんですよ(笑)。

 小幡 私も早大とかアメリカの大学の気風が合っていました。上下関係が厳しい大学で、絶えず緊張感のもとにさらされていたら、つぶれていたと思う。ただ、練習ではよく中大へ行きました。1年生でも、練習後は最初に風呂に入れてくれたことを覚えています。