※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=布施鋼治)
グランドスラム達成目前-。11月19~20日に大阪・堺市金岡公園体育館で行われる2022年全日本大学選手権に向け、東日本学生リーグ戦と全日本大学グレコローマン選手権で優勝した日体大が一丸となって燃えている。年間の団体戦をすべて制するグランドスラムは、1994年の日体大を最後に生まれていない。
偉業達成への意気込みを聞くと、同大学の松本慎吾監督は語気を強めた。
「今年は3年ぶりに行なわれた東日本学生リーグ戦を制し、大学グレコローマン選手権も取っている。この勢いで、全日本大学選手権に臨みたいという気持ちです」
大学関係者の意見に耳を傾けると、「日体大と山梨学院大の争い」という声が多い。それでも、松本監督に余裕を見せる素振りなど微塵もない。
「確かに、戦力的に山梨学院大は力を持っていると思う。それ以外でも、日大、拓大、さらに専大と、階級ごとにキーマンとなるべき選手はたくさんいる。各階級の代表が得点に絡んでいけないといけない。1階級でも落とすと、それだけで点数が開いてしまいますからね」
取材は大会の2週間前。この時点で出場メンバーをはっきりと公表できるのも、自信の現れだろう。
57㎏級は、昨年の学生二冠王者・弓矢暖人の弟で、今春入学した弓矢健人で行くことに決めた。「竹下雄登(昨年の全日本選手権2位)や暖人がけがをしている状況なので、1年生の健人を起用したい。練習もしっかりとやっているので、期待しています。山梨学院大は間違いなく小野正之助選手が出てくるでしょう。2人とも1年生なので、楽しみな試合になると思います」
61㎏級は田南部魁星を起用する。「もともと57㎏級の選手。減量も少ない国体のとき、よく動けていた。その国体で結果を残している(優勝)というのもある。勢いに乗れば、ここでしっかりと結果を残せる選手だと思う。山梨学院大の方は榊流斗選手が出てくると思う。(国体で勝っているので)しっかりと勝負できる。失点を抑えながら、国体のときのように最後まで守らないような試合展開ができれば、勝機は十分にある」
65㎏級は清岡幸大郎で勝負する。「清岡はインカレと国体で優勝しているし、本人も自信を持って臨むことができる。練習への取り組みも意欲的。今年は(清岡を含む)高知県勢が活躍している。妹(育英大の清岡もえ)はU23の世界チャンピオンになった。彼は負けん気も強いので、しっかり結果で応えてくれると思う」
▲東日本学生リーグ戦で、日体大優勝の貴重な白星を挙げた清岡幸大郎
70㎏級と92㎏級はエントリーなし(注=非オリンピック階級は、4階級のうちから2階級までを選択するルール)。74㎏級は全日本学生選手権優勝の高田煕(ひかる)で挑む。「この階級は、小柴(伊織)と高田が競り合っている。この前の国体では小柴が優勝した(高田は社会人選手に敗れ、両者の対戦はなし)。高田も十分力を持っているし、今大会で勝ち抜く実力はある。他大学から誰が出てきても、自分の実力を示せると期待しています」
小柴は79㎏級へのエントリー。「昇り調子なので、79㎏級でもしっかりと力を示すことができる。この階級は非オリンピック階級なので、他の大学は誰が出てくるか、さっぱり読めなかった。大学によってはグレコローマンの選手が出てきたりしますからね」
86㎏級は、世界選手権79㎏級代表で全日本大学グレコローマン選手権87㎏級優勝の髙橋夢大の出番だ。「髙橋はこの前の全日本大学グレコローマン選手権でも、起用にしっかりと応えてくれた。山梨学院大は(国体3位の)五十嵐文彌選手が出てくる可能性が高いけど、何回も試合をやっていて、髙橋が負けるイメージはない。今大会でしっかりと実力を示したうえで、全日本選手権で勝負させたい」
97㎏級と125㎏級では思い切った采配をふるう。97kg級は、U20世界選手権86㎏級で優勝という快挙を成し遂げ、全日本学生選手権では92㎏級を制した白井達也を出場させ、125kg級は全日本学生選手権97㎏級優勝の伊藤飛未来を起用するという。
「2人とも、下の階級の選手だけど、私も現役時代(本来はグレコローマンの選手だったが、学生時代はフリースタイルにも普通に挑戦した)、リーグ戦では最重量級に出場して、のちに警視庁へ行った強豪選手をつかまえ、払い腰でぶん投げたりしていました(1998年大会)」。
重量級は上の階級でも頭ひとつふたつ抜け出ないと、「本来の階級で勝ったとしても、世界には打って出られない」が持論。世界へ飛躍させるために、あえて上の階級での起用を決めた。
大学レスリングの天王山に注目だ。