※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治/撮影=矢吹建夫)
3年ぶりに開催された2022年東日本学生リーグ戦。一部リーグは、日体大が2大会の中止をはさんで2大会連続28度目の優勝を果たした。
松本慎吾監督は「最大のヤマ場は第2日(19日)の山梨学院大戦だった」と振り返る。事実上の優勝決定戦と思われた決勝リーグ2回戦で、日体大は最後の試合で勝負が決まる4-3の僅差でライバル・チームを振り切った。
勝因を聞くと、松本監督はチームへの信頼を挙げた。
「結果的に4-3というスコアになったけど、ほかに勝利を挙げられる選手も控えていた。そういう中で、出場した選手を信じて勝利を待っていました。それだけ力のあるチームだったと思う」
【動画】松本慎吾監督インタビュー(1分23秒=JWFフェイスブック)
3年前の優勝は、山梨学院大に敗れ、3すくみの末の優勝だった。今回の山梨学院大への勝利は10年ぶりだ。「不祥事(による出場停止)が明けた2012年以来の勝利だったので、格別な思いがある」
山梨学院を撃破したことで、最終日(20日)に組まれた拓大との決勝リーグ3回戦は気が楽だったという。
「拓大は、けがなどで2選手が出てこないという状況だった。最初から少し有利だった。その中でも勝つ者はしっかり勝って優勝につなげることができた」
125㎏級の伊藤飛未来(4年)は4戦全勝という活躍を見せ、一部リーグの最優秀選手賞を受賞した。松本監督は「けがからの復帰戦ということもあって、こちらからは見えないプレッシャーもあったと思う」と話し、その踏ん張りに目を細めた。
「(来月の)全日本選抜選手権では、97㎏級で現チャンピオンの石黒(峻士)選手といったところに迫って、追い越し、世界選手権出場のキップをつかみとってほしい」
【動画】伊藤飛未来選手インタビュー(1分33秒=JWFフェイスブック)
閉会式後、日体大の選手たちは湯元健一コーチら指導陣を胴上げしたが、その中に松本監督の姿はなかった。監督をそうしなかったことには、確固たる理由がある。
監督に就任以来、今大会、全日本大学選手権、全日本大学グレコローマン選手権で優勝して団体三冠制覇を達成しなければ、「胴上げはされない」と心に決めている。
「今年で監督に就任してから13年目に入ったけど、気をゆるめることなく、あとのふたつの団体タイトルを取って、12月からスタートするオリンピック予選に臨みたい」
以前は、全日本学生王座決定戦を含めて団体戦は四大会あった。2008年を最後に同大会が休止され、いずれの強豪校も団体戦の目標は三冠制覇に切り替わった。それでも、1994年の日体大を最後に、全大会を制覇する“グランドスラム”を達成した大学はない。
年内に松本監督が胴上げされる日は訪れるのか。