2012.08.11

【ロンドン五輪第6日・特集】「最低限の仕事はしました」…湯元鉄矢さん

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

進一の銅メダル獲得に喜ぶ鉄也さんとサツエさん

 【ロンドン(英国)、文・撮影=樋口郁夫】男子フリースタイルの先陣を切って銅メダルを獲得した男子フリースタイル55kg級の湯元進一(自衛隊)。表彰式が終わると父・鉄矢さんは「ほっとしました。最低限の仕事として、メダルだけは死守しなければと思っていたので、その点ではよかったと思います」、母・サツエさんは「大勢の人が日本から来てくれたので、取れなかったら、どうしようかと思いました」と、ともに安堵の表情。サツエさんは「あめでとう、ありがとう、ご苦労さま、と言いたい」と、息子の激闘をねぎらった。

 3位決定戦のラドスラフ・ベリコフ(ブルガリア)戦では、2人も観客席の最前列で祈るような表情で試合を追った。「祈っていました。メダルを取れなかったら、みんなにどんな顔をすればいいのかと…。お願い、という感じでした」(サツエさん)。

湯元進一の応援団。写真下の左端が父・鉄矢さん

 第1ピリオドは1-1で終わり、ラストポイントでベリコフが勝ったと思った人も少なくなかった。ベリコフ陣営からして自分たちが勝ったと思ったようだが、湯元の1点はベリコフの場外逃避による1点であり、警告を相手に与えた湯元がこのピリオドを取った。鉄矢さんはレスリング経験者らしくしっかりと見ており、「ベリコフは攻撃しないから、勘違いしていると思いました」と、けっこう冷静な面もあったようだ。

 鉄矢さんは「決勝までは残ってほしかったなあ。銅メダルだったら、(北京五輪での)兄と同じでしょ。これで絶対に兄を超すことができなくなりました。決勝に進めば、明日、兄は必死になって決勝進出を目指すことになります」とも話し、もう一段上に行って、兄(健一)の刺激をしてほしかったような口ぶり。

 それ以外にも、この4年間の成長度では健一を上回っているので、「やっぱり、もうひとついい色のメダルがほしかったなあ…」という思いがあるようだ。それでも「よくやったなあ、って褒めてやらにゃ、いかんですね」と最後は労をねぎらい、「(健一が)1回戦からバンバン行けるメダルだったと思います」と評価した。

 最後に「あとは明日です。2大会連続のメダルは価値ある。4年間マークされて、そこで取れれば、すごい価値あるメダルになります」と、兄・健一の健闘を期待した。