※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=保高幸子)
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アジア大会男子グレコローマン66㎏級の藤村義(自衛隊)は準決勝戦でダルカン・バヤクメトフ(カザフスタン)に敗れたものの、3位決定戦で今年世界ジュニア選手権2位のベシキ・サルダーゼ(ウズベキスタン)に2-1で勝って銅メダルを獲得した(右写真)。
ヨーロッパの強豪が顔をそろえる3月のゴールデン・グランプリ予選「ハンガリー・カップ」で優勝した藤村は、今年の世界選手権制覇も視野に入れた。9月ロシア大会ではまさかの初戦敗退。第3ピリオドのグラウンド攻防で、攻撃か防御の選択する時、セコンドと意見が分かれてしまい、気持ちが定まらないまま30秒を経過してしまい負けた。メダルに絡む活躍を目指していた藤村だけに、初戦敗退は予想外の出来事で、悔いが残ってしまった。
■相手国もグラウンド攻防の選択も、世界選手権と同じ!
そんな藤村に世界選手権の雪辱を晴らす機会がやってきた。4年に1度の大舞台であるアジア大会の3位決定戦。しかも相手は選手こそ違うものの、世界選手権で負けたウズベキスタンの選手、ベシキ・サルダーゼだ。
第1ピリオドの立ち上がりは、「思ったより相手の力が強かった」とグラウンドのローリングで失点。0-2であっけなく第1ピリオドを落としてしまったが、セコンドに戻ると伊藤広道監督が「おまえなら大丈夫だよ」という言葉で覚醒。第2ピリオドはニアフォールで3-0と取り返し、第3ピリオドはスタンドで決着がつかず、グラウンドの攻防に持ち込まれた。グラウンド攻防の選択権は、藤村。なんと、世界選手権と同じ状況がめぐってきた。
グラウンドの防御に自信があり、かつ第3ピリオドで相手もバテている。防御にまわるのが懸命だとばかりに、藤村は即座に「防御」を選択。素早く藤村がパーテール・ポジションの体勢をとって待つ一方で、サルダーゼは肩で息をしながら中腰の体勢からなかなか動こうとしない。それほど完全にバテていた。
予想通り、バテたサルダーゼはクラッチを組んでも藤村をコントロールするまでは至らず、タイムアップ。藤村は「今回は迷いなくディフェンスを選択することができました」とホッとした表情を浮かべた。世界選手権のつまずきをすぐさまばん回し、銅メダルを獲得。大会第一日、日本選手の全階級メダル獲得をきっちりを締めてくれた。