※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
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五輪2連覇の伊調馨(ALSOK)と世界V4の山本聖子(スポーツビズ)の3度目の対決は、全日本選手権女子63㎏級の決勝の舞台で実現。伊調が現世界チャンピオンの貫録を見せつけてストレートで山本を下し、2年連続8度目の優勝を決めた(右写真)。
55級、59㎏級で計4度世界制覇をしている山本との決勝戦は、第1ピリオドがボールピックアップの優先権を生かして獲得(左下写真)。第2ピリオドも残り10秒まで動きがなかったが、「クリンチ勝負になりなくなかったので、(タックルに)いくしかなかった」と、本能の動きで山本をねじ伏せた。
伊調は「本当は1分すぎくらいで取りにいかなければ。調子はよくなかったので、決勝で勝ててよかったです」と話したが、「取り組んできた課題が自分のものになっていない。体になじんでいない」と全3試合に対して不満を募らせた。
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北京五輪後は約1年間カナダに留学し、国内の大会は欠場。昨年のこの大会から復帰し、2012年ロンドン五輪を見据えた伊調が目標に掲げたのが、伊調スタイルの確立だった。1回戦ではバックを奪うと果敢にアンクルホールドを狙いにいくなどしたが、あまりうまくいかなかった。課題は少なくないようだ。
青森に住む姉・千春は11月下旬にロンドン五輪出場を考えないことを正式に発表。姉妹で五輪を目指すことはなくなった。だが、仕事の合間を縫ってこの大会に駆けつけ、試合前には「腰をしっかり落としていけ」とアドバイス。それによって伊調は「一緒に闘っている気持ちになった」と言う。姉妹の絆でつかんだ優勝に変わりはないようで、姉との“タッグ”でロンドン五輪へ一直線。