※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=布施鋼治)
「みんな試合がなかったので、試合に飢えていますよ」
午後の部の開始前、大阪からチームを引き連れて上京した堺ジュニア・クラブの増田周司代表は目を輝かせながら、そう言った。少年少女レスラーにとって待ちに待った大会が、ようやく開催された。11月7日、東京・杉並区立荻窪体育館で行われた「第73回杉並区区民体育祭杉並区レスリング大会」がそれだ。
カテゴリーは幼年から中学生まで。新型コロナウイルスが発生してからは、中学生が参加できる初の公式大会だった。大会を後援したゴールドキッズの成國晶子代表は、開催に向け、感染予防の消毒を第一に考えたと言う。
「会場内に入る総人数を決められていたので、保護者の来場は1チーム2名まで。会場の外で待つ保護者の方には、ネットでライブ配信される映像を見てもらうようにしました」
昨年までは3マットで開催していたが、今年は2マットで進行した。午前中は幼年の部と小学1~3年の部を行い、午後は小学4~6年の部と中学生の部を開催した。「昨年まで3面でも密になるほど人は多かった。それを2回に分け、完全入れ替え制にすることで密は解消されたと思います」
少しでも試合をする機会を与えたいと、各選手とも最低2回マットに上がれるように努め、トーナメントやリーグ戦で負けた選手にも参考試合という場が設けられた。「初心者にも頑張ってほしかったので、体重とキャリアを考慮して組み合わせを決めました」(成國代表)
レフェリーは勝者の手を上げず、終わった選手にはすぐマスク着用を義務づけた。マスクをつける日常に慣れすぎたせいだろうか、マスクをつけたままマットに上がる選手も多数見受けられた。
多くの選手を出場させた東京・WRESTLE-WINの永田克彦代表は、試合をしていないブランクを痛感したと言う。「試合は出てみないと分からないもの。今大会は、ひとつのカテゴリーの学年の幅は広いし、体重差もある中でのチャレンジマッチだったとはいえ、やっぱりみんな硬くなっていましたね。スパーリングなどの練習はたくさんやっていたけど、練習試合などの機会をもっと増やした方がいいと思いました」
中学生の部で優勝した中野端己(堺ジュニアクラブ)は「試合をしたのは今年2月以来でした」と振り返る。「首の筋肉が足りないのか、途中で首を痛めてしまった。そこで諦めないで闘い抜けたことがよかったと思う」
大会前日には、11月20~22日に行われる予定だった全国少年少女大会の開催中止が発表された。成國代表は「本当だったら全国大会の前哨戦として、その前に一回試合をしたいということで出場した選手も多かったはず」と残念がる。
「もしかしたら、今年はもうキッズの大会はないかもしれないので、貴重な舞台になったんじゃないかと思います。来年は盛大に歓声をあげられるような大会に戻したい」
1日も早く、会場に子供たちの声援が飛び交う大会が復活することを願う。