2012.06.23

【特集】菅平合宿恒例の根子岳登山は天候不良で中止…男子全日本チーム

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=池田安佑美)

登山が中止となり、マットで体力トレーニングをした全日本チーム

 男子両スタイルのロンドン五輪代表が参加している長野・菅平での全日本合宿。22日早朝に予定されていた同所での公開練習恒例の根子岳(標高2207メートル)への登山は、天候不良のため中止へ。頂上で雄たけびをあげる選手を取材すべく、登山の準備を入念にしてやってきた報道陣も残念そう。

 代替案だった宿舎から片道3キロほど離れたダムまでの坂道往復ランニング(帰りが上り坂になるため過酷)も、濃霧のために断念。4年前の北京五輪直前の同合宿では、五輪代表が快晴の空の下でメダル奪取祈願をしただけに、対照的な五輪前となった。

 午前練習はマット練習となり、基礎体力作りメニューを1時間半みっちり行った(右写真)。伊藤広道コーチ(自衛隊)は「山登りができなくて残念。(合宿は日曜日までの日程のため)再挑戦は(佐藤満)強化委員長などと話し合って決めたい」と話した。
 
 練習前には、男子フリースタイル55・60㎏級で、双子で五輪出場を果たした湯元健一(ALSOK)・進一(自衛隊)と同66㎏級代表の米満達弘(自衛隊)が囲み取材に応じ、現段階の調子などについて話した。

■負傷の治療を続けていた湯元進一が回復し、追い込む練習へ

 湯元両選手は「根子岳に登れなくて残念」としながらも、前回の北京五輪で銅メダルを獲得している健一が、「僕は前回を超えないといけない。これが五輪前の最後の追い込み。苦しい時でも足を動かす練習をしたい。今大会は(タックルに)入るための組手を重視して、(試合で)先手を取れるようにしたい」と話せば、進一も「菅平合宿はオリンピックのスイッチを入れる場所だと思っている」と、それぞれしっかりとテーマを見すえて臨んでいる。

 進一は3月初めに股関節のけがをしてしまい、5月のワールドカップ(W杯=アゼルバイジャン)を欠場するなど思うように練習ができない日々が続いた。「やっと走り込みができるようになった。もう大丈夫です。追い込む練習はこれが最後なので体力をつければ自信になる。早く(五輪で)戦いたいです」と全メニューをトップギアでこなし、回復をアピールした。

 日本レスリング界初の双子で五輪出場の実現まであと約1か月半。「双子で五輪に行けて幸せ。ずっと目の前に家族がいてくれる」(健一)とメンタル面も充実している様子だった。

W杯でのけがも順調に回復している米満

■がぶりの練習にも取り組んでいる米満達弘
 
 66kg級の米満も調子は上向きだ。W杯で個人優勝し、世界の舞台で安定した力を見せたが5月下旬の公開練習では、「ワールドカップでけがをしたし、疲れもたまり、負の要素ばかりがある」とマイナスな発言をしていた米満だが、今回は「60パーセントくらい戻ってきて、少し落ちつた」と明るい言葉を口にした。

 この1ヶ月の間には、「規模の大きさにびっくりした」と、地元で盛大な壮行会が開かれ、いい気分転換の場があったようだ。この合宿では「今までまったくできなかった、がぶりを練習している。試合でも使えたらいい」と、残り1ヶ月で実戦で使えるレベルにまで押し上げるつもりだ。

 とはいえ、米満の最大の武器は伸びのあるタックル。「身長が169cmで、リーチが184cmと手が長いことを活かしたい」と、タックルを主体に前に出る練習をテーマに掲げていた。

兄弟での五輪出場へ燃える湯元兄弟。(左が進一、右が健一)