※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=保高幸子)
世界選手権(9月14~22日、カザフスタン・ヌルスルタン)の代表メンバーを中心とした男子グレコローマンの全日本合宿が、8月5日から群馬・草津温泉で日体大などの合宿とともに始まり、7日と8日は練習を報道陣に公開。15社が取材に訪れた。
ロシア遠征から帰国したばかりの63kg級の太田忍と77kg級の屋比久翔平 (ともにALSOK)も7日に合流し、さっそく激しいマット練習で息をあげていた。
8日午前は草津温泉スキー場(天狗山)の中腹、標高約1500mにある急斜面を利用した補強トレーニングで汗を流した。太田が60kg級の文田健一郎(ミキハウス)にハッパをかけるなどして、厳しくも楽しいムードをつくり、切磋琢磨する様子が見られた。
この合宿のテーマについて、松本慎吾・男子グレコローマン強化委員長(日体大教)は「もう一度体力レベルを上げること。世界選手権に向けた最後の追い込み合宿と位置付けている。初日に3~4試合を勝ち上がるには体力が必要。最後まで力が出るような体力をつけるため、しっかり追い込んでやっていきたい」と話した。
選手たちにもしっかり伝わっているようで、オリンピック出場権獲得第1号の期待のかかる文田は「前に出る力がまだまだ。スタミナが課題。技の精度にもつながってくるので、しっかりやりたい」と話し、体力アップを課題にしてこの合宿に臨んでいる。マット練習では100kg近くある松本強化委員長との組み合いを行うなどしてマスコミを驚かせた。
1階級上の63kg級での世界選手権出場を決めた太田も「オリンピックの時に実感したことは、そこまでどれだけ練習したかが切羽詰まったところで自信や力になる、ということ。去年の世界選手権は減量のことばかり考えていたから中途半端な結果になった」と振り返る。
今回は63kg級の出場で、5kg程度の減量になり、楽になった。「UWWランキング1位のマリャニャン(ロシア)はたぶん60kg級に出場してくる。3位のタスムラドフ(ウズベキスタン)も、たぶんオリンピック階級に出てくると思う。ほかにこれといった選手はいないけど、それぞれの選手に対して、どういう練習(研究)するかは、はこの合宿が終わってからになる。今は体力レベルを上げることをテーマにやっていきたい」と、チーム一丸で追い込みに専念する合宿となりそう。
オリンピックのチャンスに向けては、12月の全日本選手権が勝負どころになるが、「世界選手権のあと、12月まで3ヶ月ある。まず9月に向けて追い込んでやることがプラスになると思う」と、今は世界王者到達が一番の目標。「ここで負けたら、『オリンピック狙う』なんてでかいことは言えない。優勝しなきゃ始まらないです」と、自身を鼓舞するように話した。
先月のベラルーシ遠征で体調を崩していた文田は、現在は体調も戻り、「草津は毎年合宿で来ていますが、いいところなので好きですね。練習は厳しいですが、堪能しています」と笑顔。食事の改善にも取り組んでいるといい、長いスパンで計画し、決めたセットでタンパク質の多い食事をとっている。
「天皇杯(全日本選手権)でけがをして、JISS(国立スポーツ科学センター)に滞在している時に食事に気をつけて以来、続けています。鶏肉料理や豆腐の入ったハンバーグなど、味気ないですが、調子が良くなった。教えていただいたり調べたりしています」と言い、体脂肪率は普段から9%を維持しているという。
「世界選手権も近くなって実感が出ています。いい調子でできている。優勝することしか考えてない。優勝して1年間フルでオリンピックのために使えるようにしたい」と意気込みを語った。
松本委員長は、世界選手権での具体的な目標について、「今年の世界選手権は、2017、18年とは別の厳しい闘いになってくるが、オリンピックの出場枠は2つ取りたい」と言う。世界選手権の1ヶ月前となる14日まで行われるこの合宿でスタミナと自信をつけ、その後は日体大で16日から合宿を行う。
※本合宿は競技力向上事業の助成を受けています。