※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
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(写真提供=John Sachs/Tech-Fall.com)
3月17~19日にペンシルベニア州フィラデルフィアで行われた全米学生(NCAA)選手権の125ポンド(56.7kg)級で、右脚のないアンソニー・ロブレス選手(アリゾナ州立大)が決勝でデフェンディング・チャンピオンのマット・マクドナウ選手(アイオワ大)を7-1で破って優勝する快挙を達成(
インタビュー動画)。最優秀選手に輝き、1万7687人の大観衆のスタンディングオベーション(大声援)を受けるとともに、全米に感動を伝えた。ロブレス選手は「夢を信じて生きれば、すべてのことが達成できる」と話した。(
関連動画)
同選手は右脚がないハンディを背負って生まれた。メサ高校に入学し、日本なら中学3年生の年齢の時からレスリングを始め、2006年には全米高校選手権で優勝している。2008年北京五輪のフリースタイル55kg級で優勝したヘンリ・セジュドとも練習したことがあるという。アリゾナ州立大に進み、2009年のNCAA大会では4位に入賞し、これだけでも満員の観客の感動と涙を呼んだ。(
早大教・太田章さんのレポート)
昨年は7位だったが、最終学年の今年は優勝候補に挙げられてNCAA選手権に臨み、見事に優勝を勝ち取った。太田さんの話によると、「右脚がない分、それだけの体重分の筋肉が上半身についている。そのパワーが生きた」と分析する。ふだんは松葉杖をついており、握力の強さもレスリングの強さにつながっているようだ。いずれにせよ、ハンディを乗り越えて栄光をつかんだドラマは、努力すれば不可能はないことを教えてくれる感動ドラマと言えよう。
ロブレス選手は「私は長い間、この瞬間を夢見てきた。この時を迎えるために祈ってきた。それを成し遂げたことで、考えられないような気持ちになっている。とても強い自信が湧き出てきた」と話した。2年前に4位に入賞した時から、多くの人から「感動した」といった声援を受けたという。それが頑張るモチベーションになっていたとともに、「私のファイトが人に勇気を与え、人生を変えるきっかけになってくれるのなら、とても光栄なことだ」と続けた。